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『AMAZON 密林の時間』 山口大志撮影による写真集 クレヴィス [生物学]


AMAZON 密林の時間

AMAZON 密林の時間

  • 作者: 山口 大志
  • 出版社/メーカー: クレヴィス
  • 発売日: 2017/09/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


開高健の『オーパ!』と肩を並べる・・・

動植物、昆虫の写真が豊富に収められている。動物園や公園で撮影したわけではない。「河口の町ブラジルのベレンから、ペルーのイキトスまで、およそ3500kmもの間、見えるものは川と森と空だけ」の世界から、辛抱づよく切り取ってきた写真の数々である。

作者は次のように書いている。「飛行機から見たアマゾンのジャングルは本当にぞっとする。見渡す限り地平線の向こうまで緑の木々に埋め尽くされているのだ。その中から生き物を観察し、カメラのフレームに収めるのは容易ではない。そこに目的の動物がいたと聞いても、ほとんどは遠くにいて豆粒くらいにしか見えない。これまでの旅の経験から自分の思い描いた写真は、アマゾンではひと月の滞在で1、2枚くらいしか撮れないと考えるようになった。よって2,3ヶ月、長いときは半年の渡航スケジュールを立てた。友人からは驚くほどの非効率な撮影といつも笑われたものだ。」

また、非効率なだけではない。危険も撮影と背中合わせにあったことを、同じく後記(「アマゾンに魅せられて」)で作者は記している。「水草の生い茂る美しい小川で水中撮影に夢中になりワニに遭遇」して「肝を潰した」こともあるという。さらには、現地の人が「長さ10メートル、胴体はこれくらい(扇風機ほど)太いぞ」というアナコンダのいる地域で、そして、さらには人為的な危険(「政情と治安の悪さ」)の中で撮影はなされた。

写真集は一般に価額が高い。本書は、写真集にしては、たいへん廉価である。ハードカバーであれば5000円は優に超えるだろう。ソフトカバーにしても、たいへん安いと思う。多くの人が入手しやすい価格で提供してくれているのだろうと思う。また、実際に手に取って見てもらいたい本だ。

「大アマゾン(驚異に満ちた生態系)」と題した湯本貴和京都大霊長類研究所所長の解説は、以下の見出しで展開する。アマゾンとは / 世界最大の熱帯雨林 / 川の森・アマゾン / 熱帯林の不思議な生きものたち / アマゾンの里山 。全体に短いものではあるが、写真集の目次に沿うようにして記される魅力的な内容だ。

アマゾンと聞くと、まず作家にして冒険家・釣り人でもあった開高健の著作アマゾン川・釣り紀行『オーパ!』を思い出すが、当該写真集もそれに肩を並べる魅力的な写真集であるように思う。

目次は、1/熱帯雨林の恵み 2/ 川に生きる(豊饒の大河) 3/ シロウアカリの森で(アマゾンの里山) 4/ 塩場に集まる動物たち 5/ 雲霧林に息づく生命 // 大アマゾン(驚異に満ちた生態系) / 湯本貴和 // アマゾンに魅せられて / 山口大志 本書関連地図

2017年12月15日にレビュー

オーパ! (集英社文庫 122-A)

オーパ! (集英社文庫 122-A)

  • 作者: 開高 健
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1981/03/20
  • メディア: 文庫



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