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カマドウマとハリガネムシと渓流魚と腐生植物(『したたかな寄生』 成田 聡子著 から) [生物学]


したたかな寄生 脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様 (幻冬舎新書)

したたかな寄生 脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様 (幻冬舎新書)

  • 作者: 成田 聡子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/09/28
  • メディア: 新書



上記書籍(『したたかな寄生』)のなかで、とりわけ面白く感じたのは、ハリガネムシに関する記述だ。

ハリガネムシが、カマドウマに寄生して入水自殺させるのだという。

カマドウマは、別名「便所コオロギ」と言われる。バッタのように跳ねる長い足をもち、コオロギよりずっと柔らかく、ちょっとさわるとツブレル。

最近、タレントのふかわりょう氏が、コオロギはさわれても、カマドウマは・・・と、「きらクラ!」というNHK-FMの音楽番組で話していたと思う。虫の苦手な面々には、たいへん抵抗のある虫だ。

ところが、そのカマドウマが、われわれの食と深く関係していることが、『したたかな寄生』に示されている。

なんとその(実験の)結果、川の渓流魚が得る総エネルギー量の60パーセント程度が、寄生され川に飛び込んでいたカマドウマであることがわかったのです。実際にカマドウマが水に飛び込むのは1年のうちで3ヶ月ですが、その時期に渓流魚が得る総エネルギー量の9割以上がカマドウマとなります。そしてその3ヶ月間というのは渓流魚が1年のうちで一番たくさんエネルギーを得られる時期で、冬に比べると100倍にもなります。それを踏まえて計算した結果、年間の60パーセントのエネルギーがカマドウマ由来ということがわかったのです。(「ハリガネムシがつなぐ森と川」p70、71)

さわるのもたいへん抵抗のある虫が、イワナなどの餌になって、それを「美味い」などと言って食していたことになる。

もしかすると、直接たべても美味いのかもしれない。

昆虫食古今東西

昆虫食古今東西

  • 作者: 三橋 淳
  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2012/07/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



そういえば、カマドウマについて、最近、ニュースがあった。

暗い森、ひそかな種まき=寄生植物、カマドウマと共生-神戸大
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017112700123&g=soc

光合成をやめた寄生植物:腐生植物とカマドウマが共生関係にあることがそこには示されている。

世界はさまざまな共生関係にある。その関係は驚嘆すべきものだ。


森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界

森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界

  • 作者: 塚谷 裕一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/05/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



余談だが・・・

著者は「あとがき」で、「私たちホモサピエンスは地球のすべての大陸に生息し、・・・略・・・私たちは疑いようもなく現在地球上で最も繁栄している生物種といえます。」と、述べ、次のように続ける。

西暦元年には3億人、その1000年後には3億1000万人になっていました。西暦1000年というと、日本では平安時代です。その頃には、世界全体で人類は3億1000万人、日本全体では600万人程度の人口でした。つまり、平安時代には日本全体で現在の東京都の人口の半分しか存在していなかったのです。 / かつて、1000年間かかって世界全体で1000万人しか増加しなかった人口は、次の1000年ちょっと(西暦1000年~2017年現在まで)で70億人増加し、2017年現在の世界人口は73億人となっています。つまり、現在の人口増加はかつての1000年間での人口増加の700倍でおこなわれており、この瞬間にも1日で20万人もの人間が増え続けています。

その繁栄ゆえにも、他の生物種への影響力甚大な、知性をもつ生物種である人類は、地球上に共生する他の(いまだ知られていないものも含め)生物種すべてに対して責任を負っているのではないか、と思ったしだいである。

2017-12-15

IUCN レッドリスト 世界の絶滅危惧生物図鑑

IUCN レッドリスト 世界の絶滅危惧生物図鑑

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 丸善出版
  • 発売日: 2014/01/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


暗い森、ひそかな種まき=寄生植物、カマドウマと共生-神戸大
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017112700123&g=soc


暗い森で光合成をやめた寄生植物は、「便所コオロギ」と呼ばれるカマドウマに果肉を与え、種を運ばせている-。神戸大の末次健司特命講師の研究で、目立たない植物と昆虫の共生関係が明らかになった。論文は英科学誌電子版に掲載された。

植物が種を広める方法は、果肉と一緒に動物に種を食べさせる「動物被食散布」が多いが、光合成をやめた寄生植物は、動物が好む栄養豊富な果肉を作る余力がない。風の力で種をまく方法も、森の中では難しい。

末次講師は静岡県富士市で、キノコの菌糸に寄生するギンリョウソウとショウキラン、アジサイなどの根に寄生するキヨスミウツボを観察。ネズミが食べない果実を、カマドウマが頻繁に食べているのを突き止めた。

カマドウマのふんからは、発芽能力がある種が見つかった。種が極めて小さいため、かみ砕かれなかったとみられる。
 
ギンリョウソウは、モリチャバネゴキブリも果肉を食べ、種を運んでいることが熊本大の研究で判明している。害虫扱いされる昆虫が多いが、末次講師は「暗く湿った場所を好み、悪食で何でも食べるためかもしれない」と推測する。
 
観察した3種は、ツツジやランなど異なるグループの植物で、末次講師は「それぞれ独自に進化した結果、昆虫に種を運ばせる性質を得たことは興味深い」と話している。(2017/11/27-04:27)
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