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*したたかな寄生  脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様』 成田 聡子著 幻冬舎新書 [生物学]


したたかな寄生 脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様 (幻冬舎新書)

したたかな寄生 脳と体を乗っ取る恐ろしくも美しい生き様 (幻冬舎新書)

  • 作者: 成田 聡子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/09/28
  • メディア: 新書


生物の世界の驚異を家族で実感できる

寄生に関する本。副題にあるとおり、宿主に寄生して、宿主を乗っ取る事例が豊富に出ている。

『はじめに』で著者のいうには、生物学では、寄生も共生の一つ。「生物種同士が助け合う関係も、害を与える関係も、何の影響もない関係もすべて『共生』」で、「異種の生物同士が同所的に存在することを」「共生」と呼ぶのだそうだ。

そして、「本書では、それらの共生関係の中でも、小さく弱そうに見える寄生者たちが自分の何倍から何千倍も大きな体を持つ宿主の脳も体も乗っ取り、自己の都合の良いように巧みに操る、恐ろしくも美しい生き様を紹介し」ている。

ひとつひとつの事例を見ていくと、寄生するモノらの生存戦略に驚くと共に、トンデモナイ悪であるように思いもするが、なんのことはない、地球に「共生」する生物のなかで、いちばん影響力を示しトンデモナイ悪を成しているのは、ほかならぬ人間ではないか・・。他の生物種を、「自己の都合の良いように」利用し、あるいは無視し、どんどん絶滅のレッドゾーンへと追い込んでいるのも人間ではないか・・・。

そう思えてくるのは、著者の視点が、地球を俯瞰する高みにあるからである。と、同時に、それらの生物たちとおなじ生き物としての自覚をつよく持っているからである。そして、それが、本書の内容の恐さとはうらはらに、たいへん爽やかな印象を与えるものとなっている。

居間で、ホーっとため息をつきつつ、スゴイねーとうなりつつ本書を読んだ。そして、読んだ内容を、家人に話し聞かせ迷惑がられた。思わず話したくなる内容なのだから仕方ない。それでも、内容を話し聞かせると家人もホー、スゴイねーと興味を示した。子どもででもあれば、なおさらだろう。

生物の世界の驚異を家族で実感できる、たいへん良い本であるように思う。

2017年12月14日にレビュー

以下、目次

はじめに
1  自然界に存在するさまざまな共生・寄生関係
2  ゴキブリを奴隷化する恐ろしいエメラルドゴキブリバチ
3  体を食い破られても護衛するイモムシ
4  テントウムシをゾンビボディーガードにする寄生バチ
5  入水自殺するカマキリ
6  アリを操りゾンビ行進をさせるキノコ
7  ウシさん、私を食べて!と懇願するアリ
8  あなたがいないと生きられないの!蜜依存にさせるアカシアの木
9  カニの心と体を完全に乗っ取るフクロムシ
10 寄生した魚に自殺的行動をさせる
11 エビに群れを作るように操るサナダムシ
12 脚が増えるカエル
13 巣を乗っ取り、騙して奴隷としてこき使う寄生者たち
14 自分の子を赤の他人に育てさせるカッコウの騙しのテクニック
15 怒りと暴力性を生み出す寄生者
16 操られ病原体を広めていく虫たち
17 幼虫をドロドロに溶かすウイルスの戦略
18 私たちの腸内の寄生者たち
19 私たちの脳を乗っ取る寄生虫
おわりに 参考文献 


海の寄生・共生生物図鑑: 海を支える小さなモンスター

海の寄生・共生生物図鑑: 海を支える小さなモンスター

  • 作者: 星野 修
  • 出版社/メーカー: 築地書館
  • 発売日: 2016/07/20
  • メディア: 単行本



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