SSブログ

『ロマ Roma 「ジプシー」と呼ばないで』 金子 マーティン著 影書房 [ノンフィクション]


ロマ 「ジプシー」と呼ばないで

ロマ 「ジプシー」と呼ばないで

  • 作者: 金子 マーティン
  • 出版社/メーカー: 影書房
  • 発売日: 2016/09/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


偏見と偏見が生み出すもの

放浪する民とされる「ジプシー」とは実際どんな人々か?日本でいう「サンカ」のようなものか?少数者、マイノリティーへの関心から、評者は本書を手にした。しかし、書籍タイトルにあるように、「ジプシー」という呼称は彼ら・彼女たちの望まない名称であるという。

著者幼年の記憶から、本書は始まる。「ジプシーは子どもをさらう」という中世からつづく偏見があり、その偏見を個人的に体験する。「恐い人たちがきたから今日は外で遊んじゃダメ」と祖母に言われる。その時、家の前をロマの人々が通ったのだという。偏見・流布のきっかけはセルバンテスの著作であるという。評者の子どもの頃、南京袋をかついで歩く浮浪者がいたのだが、その名をあげて、祖母から同じことを(つまり、「さらわれる」)言われたのを思い出した。

偏見は、当のモノを実際に知らないところから発生する。著者は、彼ら・彼女たちとの交流をとおして知った実際のロマについて記す。また、ロマの歴史を示す。ナチスの支配下、ロマの人々は、「子どもをさらう」どころか、子どもをさらわれ、親から引き離され、断種され、強制収容所でのホロコーストを経験する。そして戦後、今日に至るまで、十分な補償もなされないまま、相変わらず心無い人々からの偏見と差別の対象とされてきた。そして、今ふたたび、ホロコーストの歴史がくりかえされるかの動きがあるという。《「歴史修正主義」勢力が唱えるインチキを見抜き、史実を知る》よう著者は警鐘を鳴らす。

本書は、自分はマイノリティーであると考える人には、偏見から身を守るため、マジョリティーであると思う人には、偏見によって、よわい者イジメに巻き込まれないための助けとなるにちがいない。

2016年12月14日にレビュー

あるロマ家族の遍歴―生まれながらのさすらい人

あるロマ家族の遍歴―生まれながらのさすらい人

  • 出版社/メーカー: 現代書館
  • 発売日: 2012/09/01
  • メディア: 単行本



ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺―アウシュヴィッツ国立博物館常設展示カタログ日本語版

ナチス体制下におけるスィンティとロマの大量虐殺―アウシュヴィッツ国立博物館常設展示カタログ日本語版

  • 出版社/メーカー: 反差別国際運動日本委員会
  • 発売日: 2010/02/01
  • メディア: 大型本



nice!(1)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

トラックバック 0