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『国家を考えてみよう』橋本 治著 ちくまプリマー新書 [社会・政治]


国家を考えてみよう (ちくまプリマー新書)

国家を考えてみよう (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 橋本 治
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/06/07
  • メディア: 新書


「あっちへ行ったりこっちへ行ったりして」ながら、著者と共に考え、思いを深めていく醍醐味

2016年6月10日が初版第1刷の日付となっている。本日(7/10)の参院選挙を意識して急遽発行された本であるようだ。巻末ちかくに、次のようにある。《 この夏から、参政権ーつまり選挙権は18歳にまで引き下げられます。政治に参加するのが「権利」であるのは、国民が長い間政治から排除されて、権力者の言いなりになっていたことの結果なのです。// 参政権を与えられるということは、政治に参加する義務を与えられたことで、「自分達がこの政治を支えていかなければならない」ということを自覚させられることです。// ちゃんと考えられるだけの頭を持たなければ、ちゃんとした政治を支えることはできません。ちゃんとした判断力を持たなければどうなるのでしょう? 「民主主義はバカばっかり」と言われる、その「バカ」の一人になるだけです。// はっきりしているのは、「たいせつなことはちゃんと考えなければならない」-これだけです。・・ちゃんと考えて、うっかりして人に騙されないようにしなければならない 》。

著者『あとがき』には、執筆の意図が次のように明らかにされている。《 「誰かに決めてもらう前に、自分で決めておかなければなりません。どうしてかと言えば、国家というものが「我々国民」のものだからです。だから、大事にしなければいけないし、ちゃんと考えなければいけないのです。なによりも大事なのは、そのことです。「国家は我々国民のものである」-このことをはっきりさせるために、私はこの本を書きました。・・略・・》

若い人向けに、講堂で、身近なたとえを用いつつ話しかけるような書きぶりで、《私の話はあっちへ行ったりこっちへ行ったりしているので、そろそろ「この人はなにを言おうとしているんだろうか?」と思う人も出て来るかもしれませんが、話にはいろいろと段取りがあるので、私も大変です》などと、ある。

その「段取り」が、その「大変」なところが、たいへん興味深い。(以下、たいへんひどく大雑把な要約というか、“当方なりに”まとめたものにすぎないのだが、あえて記すと・・)著者は「国家を考える」にあたって国家を考えないことを前提にしようとする。「国家」というとき、それはひとつの「家」であり、家は家長(というリーダー)を必要とする。そのような呪縛のもとに、我々はあり、第二次大戦後までそれはつづいた。「国家」における家長は天皇であり、国家は天皇のものであり、そして事実(実質)上は、国家は天皇を擁した政府のものであり、そうした政府のもと、国民は(臣民として)いいようにあしらわれてきた。戦後、日本国民は、臣民ではなくなったハズだが、その延長(伝統)上にいまだにいて、「うっかりして」「騙され」バカにされ、いいようにあしらわれる可能性は高い。それゆえ、ちゃんと自分の頭で考えなければならない・・・。

著者は、漢字の「國(国)」という文字のこと、封建制度のこと、大政奉還・王政復古の大号令のこと、福澤諭吉の「学問のすすめ」のことなどなど「あっちへ行ったりこっちへ行ったりして」話しを進めていくのだが、著者と共に考え、思いを深めていく醍醐味が、まさにそこに存するように思う。

若い人たちだけではなく、誰もが(とりわけ「民主主義における政治参加は『権利』であって『義務』ではない」などと思っている方は特に)読むべき(に値する)本であると思う。

2016年7月10日レビュー


天皇畏るべし 日本の夜明け、天皇は神であった

天皇畏るべし 日本の夜明け、天皇は神であった

  • 作者: 小室 直樹
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2016/04/30
  • メディア: 単行本



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