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『アスペルガー流人間関係 14人それぞれの経験と工夫』東京書籍 [心理学]


アスペルガー流人間関係 14人それぞれの経験と工夫

アスペルガー流人間関係 14人それぞれの経験と工夫

  • 作者: ジュネヴィエーヴ エドモンズ
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2011/08/12
  • メディア: 単行本


必要なのは 「新しい視点」・・・

アスペルガー症候群と診断された方とその親の手記、経験談。彼らがかかえる生きるうえでの困難、タイヘンさが、実際に伝わってくる。読み飛ばすつもりでいたが、ずっと読んでしまった。印象として、『分裂病の少女の手記』 (みすず書房)を読んだときのことを思い出していた。それは、言ってみれば、ちがう世界に住む人のはなしを聞いて体感する感覚だ。

この本には、オモシロイ言葉が使われている。NTという略称だ。編集注には NT(Neurologically typical)=神経学的典型→定型発達(者)の略称 とある。 AS(Asperger syndrome)=アスペルガー症候群に対する言葉として示されている。

それが、本文中、原著・編者によって「定型発達症候群」(Neurotypical syndrome)として紹介されている。そこには「シンドローム」が付されている。その意味内容について《「定型発達症候群」は神経学的な障害であり、社会の問題に対する没頭、優越性への幻想、周囲との適合への固執という特徴をもつ。定型発達者(NT)は、自分の経験する世界が唯一のものもしくは唯一正しいものであるとみなす傾向がある。NTはひとりでいることに困難をもつ。NTはさして重要に思えないような他人の差異に対してしばしば非寛容である。NTは集団になると、社会性および行動において硬直し、集団アイデンティティを保持する手段が機能不全で、破壊的になり、信じ難い儀式の遂行に執着することがよくある。NTは率直なコミュニケーションを苦手とし、自閉的スペクトラムの人に比べてうその出現率が高い》と、ある。

原著・編者は、この「説明は、私たちに新しい視点をもたらしてくれます」と述べている。その「新しい視点」は、アスペルガーの人たちを「患者」「障害者」としてでなく、少数派であるとみなし、それに対し多数派であり自分をフツウ・マトモであると思っている者たち(NT)も、(アスペルガーの人たちから見れば、特に)ある種の「患者」「障害者」であるとみなす見方だ。共に支え合い助け合って生きることの大切さを示す見方と言っていいだろう。

本書から「アスペルガー症候群」とはいかなるものか、ASの人たちとどうつきあうべきか体感的に知ることができる。また、彼らがかかえる対人関係の困難さから、あらためて、「友達」「友情」とは何かについて再考するよい機会となるように思う。

2016年7月1日レビュー


分裂病の少女の手記―心理療法による分裂病の回復過程

分裂病の少女の手記―心理療法による分裂病の回復過程

  • 作者: マルグリート・セシュエー
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1971/07/05
  • メディア: 単行本



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