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『地域アート 美学/制度/日本』 藤田直哉編・著 堀之内出版 [アート]


地域アート――美学/制度/日本

地域アート――美学/制度/日本

  • 作者: 藤田直哉
  • 出版社/メーカー: 堀之内出版
  • 発売日: 2016/03/10
  • メディア: 単行本


「現代アート」のいま(「地域アート」)を知ることのできる本

本書は、SF・文芸評論家である編著者が、文芸誌「すばる」(2014年10月号)に寄稿した『前衛のゾンビたち 地域アートの諸問題』に、とても大きな反響が寄せられたのが、そもそものはじまりらしい。書籍冒頭に『・・ゾンビたち』が掲載されてある。

「地域アート」については、「まえがき」に次のように示されている。《「地域アート」とは、ある地域名を冠した美術のイベントと、ここで新しく定義します。//「地域アート」は、「現代アート」から派生して生まれた、新しいジャンルです。//現代の日本において「地域アート」は非常に盛んになっています》。《「地域アートは、今までの芸術と異なって、関わる人が膨大に広がっていることも大きな特徴です。作家、キュレーターだけでなく、運営をサポートするボランティアの人たち・・略・・観客も重要な「芸術」の担い手と看なされています。時には、そのような人々の繋がりや参加そのものが作品の本体となることも起こっています》。《そのような新しい芸術が、なぜ生まれ、このように盛んになっているのか、その背景、そこにある美学、それから問題が、本書が明らかにしようとするものです》。

『前衛のゾンビたち』には、《彼ら(マルセル・デュシャン、アンディ・ウォホル)の作品は、一般に「現代アート」と呼ばれている。だが、今、最も隆盛している「現代アート」は、こうした作家の作品ではない。今や主流となりつつあるのは「地域アート」なのである》と、ある。つまり、今や、地域ーローカルー地方ー田舎のイメージさえある芸術が、最前衛の芸術を意味するらしい。すくなくとも、「地域アート」が、「現代アート」のいまを形作っているといっていいのだろう。

その「地域アート」には、いわゆる「問題」があるという。ひとつには、“制度”のなかに組み込まれてあること。作家の内面から「自由」に創造されるものでないこと。さらには、“日本”の文化政策の一部として、政府や自治体から「助成」を受けていること。それが、書籍の主題に付随する「制度」「日本」の意味するところで、それを軸に「地域アート」に迫ろうという意図が示されている。“美学”は「感性・認識の学」という意味で、《芸術作品を鑑賞・享受する「感性・認識」が、大きく変動する時期に入っているのではないかという仮説》が、本書で検討されることを意味する。

本書は、評論、対談、鼎談、の集成で、論議はアートしろうとにも分かるレベル。芸術の本を意識しての装丁はいいのだが、紙面印字がブルーで、読むのに難儀した。せめて印字ポイントをもう少し大きくして欲しかった。

2016年6月19日レビュー


ひらく美術: 地域と人間のつながりを取り戻す (ちくま新書)

ひらく美術: 地域と人間のつながりを取り戻す (ちくま新書)

  • 作者: 北川 フラム
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2015/07/06
  • メディア: 新書



アートプロジェクト (芸術と共創する社会)

アートプロジェクト (芸術と共創する社会)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 水曜社
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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