『日本刀を嗜む』 (刀剣春秋編集部・監修 ナツメ社刊) [アート]
日本刀の基本的な知識・歴史から、鑑賞できる場所の紹介、購入・手入れ方法まで
本書は、宮帯出版社から月1回発行されている刀剣業界新聞「刀剣春秋」編集部・監修の書籍です。
以前、宮帯出版発行の『史眼』(津本陽・井伊達夫著)を読んだことがあります。基本的には歴史にまつわる対談本なのですが、口絵写真や参考コラムにみられる刀剣甲冑に関するマニアックな内容におどろいたことがありました。読んだ当時は「一地方出版社」として認知する程度であったのですが、当該書籍・編集部名から宮帯出版を知り、その内容のマニアックであることの謎を理解することができた次第です。
本書『はじめに』を(「日本刀の美しさ」と題して)、刀剣鑑定・研究家 飯田一雄氏が執筆しています。「武家では日本刀を所蔵することが一つの誉れであった」こと、「恩賞として、贈り物として、また形見分けの遺産とするなどして」きたこと、「日本刀が美術品として称揚されるのは、優れた技を備えた上に美しさがみなぎっていることによる」こと、「日本人は常に美を探究し続け、武器としての鋭利さを超越して至高の気高さを良しとした」こと、「日本の民族性を最もよく表したものが日本刀といえるのかもしれない」こと等が述べられ、そしてさらに、「ものの鑑賞と鑑定には一種の勘(かん)を備えることが大切だ」が、その「勘」「ひらめき」「目筋を養う」ために、参考書を読み、先輩の話を聞き、「たゆまぬ努力と研究の積み重ねによって(日本刀への)理解を深めていく」ことが推奨されています。
当該書籍中、強烈な印象を受けるのは、「名刀図譜17」、「天下五剣」、「天下三作」など多数の写真です。それらには、魅力的な解説が付されていて、妖しい魅力に囚われます。刀剣の高級カタログを見ているようです。本書では、日本刀 各部の名称など基本的な知識からはじめて、鑑賞スポットの紹介、鑑賞会への参加法から日本刀の購入方法、手入れの仕方まで丁寧に記されていますが、とりわけ、購入を考えている方にとって有用に思えます。そのために多くのページが割かれていもいますし、高級カタログ中の写真・解説に通じるなら、良品を見定め入手する際の「勘」「ひらめき」「目筋を養う」大きな助けになろうかと思います。
ソフトカバーの書籍で、いわゆる「豪華本」といった造りではありませんが、価額だけの値打ちは充分にあると思います。
2016年3月28日レビュー
************
宮帯出版社ホームページ
http://www.miyaobi.com/publishing/