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*『鶴見俊輔座談 昭和を語る』 (晶文社発行) [日本史]


昭和を語る: 鶴見俊輔座談

昭和を語る: 鶴見俊輔座談

  • 作者: 鶴見 俊輔
  • 出版社/メーカー: 晶文社
  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: 単行本



現在を照らし出す『昭和』についての対談

昭和について、とりわけ昭和の戦争について語られています。その内容は、過去の事跡をめぐるものでありながら、同時に現在を照らしだすものです。「終戦(敗戦)の日」とそれにつづく「占領」の期間、そして、その時々の個々人の思いは、現在の社会に繋がっています。切れてはいません。「昭和」と現在は、地続きなのです。そのことを、実感できます。考えさせられます。単に、表層的・時系列的にというのでなく、地表深く横たわる『岩床』に思いを寄せることができます。

巻末の『解説(中島岳志・筆)』には、当該書籍の対談が『鶴見俊輔座談』(全10巻 晶文社、1996年)から選び取られる際の方針が以下のように示されています。「本書は戦後日本を代表する知識人・鶴見俊輔が1960年代から90年代にかけて行った特色ある対談・座談を集成したものである。本書のキーワードは『岩床』。鶴見は表層的な右派/左派の壁を越え、人間の本源的な行動原理に迫る。//鶴見が評価する人物は、一貫した『岩床』を持った人物である。人はどうしても時代に左右されやすく、変化に迎合する。23歳で終戦を迎えた彼は、戦中と戦後で発言や態度を一変させる人間を多く目の当たりにし、嫌悪した。彼は小賢しい人間を横目で見ながら、変わらぬ岩床を持つ人間に敬意を寄せた。//鶴見にとって『自分の古さを自覚し、岩床を探ろうとする』人間こそ、真の保守主義者だった。本当の保守は、時代に阿らない。変えることのできない価値に信頼を寄せ、庶民の集合的経験知を重視する。一時の断片的熱狂に冷水をかけ、極端なものを嫌う。そのような一貫した態度こそ、保守の神髄である。・・・」と、あります。

2015年10月20日レビュー

(以下、目次)

対・都留重人:ルーズヴェルトのことば
(官僚の温存/転換は1947年/占領の意味/法令の肥大/日本の官僚と国際的舞台)

対・古関彰一・河合隼雄:「日本国憲法」のミステリー
(憲法の現在/日本の法律には顔がない/推理小説以上のミステリー/「わたしは女性にしか期待しない」)

対・富岡多恵子:強姦について
(このことばをはじめて耳にしたとき/分光器にかけられる男/家庭内強姦とその未来/まわってくるツケに気づかない批評家/男女共学の実をあげていないいまの学校制度/反強姦文学)

対・鮎川哲夫・福嶋行雄・マーク・ノーネス:人間が去ったあとに
(アメリカ映画「広島・長崎における原子爆弾の効果」/加害国と被爆国の意識がつながる/現代の国家的メカニズム映像/

対・羽仁五郎:8月15日に君は何をしていたか
(伏せ字のない本を/北京から東京に)

対・開高健:焼け跡の記憶
(戦後史と手仕事/シャッター反応/政治宣伝のこわさ/山川草木とともに)

対・司馬遼太郎:「敗戦体験」から遺すもの
(時代はいつ変わったのか/期待と回顧の次元/ぬやまひろしと葦津珍彦/非国家神道/「思想? フーン・・・」/軍備の意味をなさない/停頓の思想)

対・吉田満:「戦後」が失ったもの
(日本人のアイデンティティー/まちがう権利/勝つことのむずかしさ/吉田茂と石橋湛山/宙に浮いた戦争責任/「村」の再評価を/「日本」との新しい結合)

戦後史の争点について 鶴見俊輔氏への手紙 粕谷一希
(自由な言論のために/今日への危惧/戦争体験とその意味/戦後日本の社会と国家/繁栄のかげの亀裂と退廃/市民の論理と国民の論理)

戦後の次の時代が見失ったもの 粕谷一希氏に答える 鶴見俊輔
(現代把握の手がかり/国家批判の力/保守的懐疑主義/国家への対応)

対・中沢新一:世界史のなかの天皇制
(ヨーロッパ文明の危機と天皇制/占領の遺産と敗戦の遺産/天皇制を多中心に批判する/あるべき天皇制の姿とは?/世界のなかでの天皇制)

対談者紹介、初出一覧

解説 鶴見俊輔の岩床 中島岳志
(保守の「岩床」/伝統と反戦/反進歩の英知/「期待の次元」と「回顧の次元」/戦後への反逆/自己を突き刺す/粕谷一希との論争


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