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『地球とヒトと微生物』(山中健生著・技術評論社発行) [生物学]


地球とヒトと微生物 ―身近で知らない驚きの関係― (知りたい!サイエンス)

地球とヒトと微生物 ―身近で知らない驚きの関係― (知りたい!サイエンス)

  • 作者: 山中 健生
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2015/04/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



生命を支えるこれらのものたちをいつも意識していたい

『はじめに』を見ると、「細菌、カビ、酵母などの微生物は、私たちの周辺にたくさん棲んでいて、私たちに利益をもたらしたり、害を与えたり」することが示されています。「害」という面でいうと、「ある細菌がコンクリートを腐食してぼろぼろにすること」「床下の土の中に」いる細菌が「ある条件下では地面の不均衡な隆起」を引き起こしたり、硫酸を発生させたりして、柱を支える束石やコンクリートををぼろぼろにし、結果、「宅地の盤崩れによる家屋の被害」がある市の周辺では1000戸もあったという驚くべき報告もなされています。

その一方、「益」という面では、「細菌をふくむ微生物は、地球上の、“有機ごみ”を分解して環境をきれいにしてくれる大切な存在です。さらに、たとえば、窒素ガスをアンモニアに変化させて植物に供給する細菌がいるほか、アンモニアから亜硝酸塩を経て硝酸塩にして再び窒素ガスにする窒素の循環に、数種の細菌が関与しています。また、硫化水素が単体硫黄を経て硫酸になり、再び硫化水素になる硫黄の循環にも、数種の細菌が関与しているのです」と、あります。

著者は、「物質循環に関与している細菌には、無機物だけで生きることのできる無機栄養細菌(独立栄養細菌)が多いのです」と述べ、自身が、「約40年間、このような無機栄養細菌の研究をしてきた」者であり、「本書では、主に無機栄養細菌の特徴などを述べ、その地球環境および人間との関係について述べてみようと思います」と、執筆動機を示します。

さらにまた、「地球の表面(海底、大気を含む)には様々な微生物が生息していて、人間はそれらのおかげで生きてゆくことができるともいえます。微生物の中には病原菌など人間にとって都合の悪いものもありますが、ここでは地球環境と密接に関係した微生物を取り上げ、それらが人間の生活にどのように関わっているか考えたいと思います。このように(微)生物を介した人間と地球の相互作用を研究する学問分野を『生物地球化学』といいますが、本書ではその一端をご紹介することができると思います」とも記しています。

当該書籍は、技術評論社の「知りたい!サイエンス」シリーズの一冊として発行されました。新たに加えられた当該書籍も、専門的な情報を、かみくだいて提供してくれるものです。

2015年9月3日レビュー


生き物たちのエレガントな数学 (知りたい!サイエンス 19)

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  • 作者: 上村 文隆
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2007/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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  • 作者: 近藤 和雄
  • 出版社/メーカー: 技術評論社
  • 発売日: 2015/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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