『福田恆存: 人間・この劇的なるもの』河出書房新社発行 [自伝・伝記]
とことん自分の頭で考え、表現した人の全貌が見える
当方、福田恆存のよい読者ではありません。その名を聞いてパッと思い浮かぶのは、シェイクスピア劇の全訳を果したこと。また、コリン・ウィルソン『アウトサイダー』の翻訳者に名を連ねていたことくらいです。ですから、うわさ程度に知っているだけといってイイと思います。それでも、最近、出版された『人間の生き方、ものの考え方 学生たちへの特別講義 』を読んで、たいへんオモシロイ人だなと思いました。日本でタブー視されているモノにおそれず喰らい付いて論じている点で特にそう感じました。そんな関係で、当該書籍を手にしたのですが、(まだぜんぶ読みきってはいないものの)福田の作品を読み、また、親しく回顧するひとりひとりの福田評から見えてくるのは、「やはり、この人はオモシロイ人だ」という印象です。なによりも演劇人であり評論家であるわけですが、いずれにしろ「言葉でメシを食った人」、それも自分の頭でとことん考え、自分の言葉で表現活動をした人なのだなという印象です。巻頭を飾る対談(『入門・福田恆存 中島岳志×浜崎洋介 いま、福田を読むこと』)の末尾で、中島岳志が「通俗的な『右・左』という二分法が崩壊したゆえに輝きを増すのが、福田という人の面白いところです。普遍的なことを言っているので、数百年後でも読まれるかと思います」と述べていますが、自分の頭で考え抜いて、話し、また書き記したモノを、周囲の人々が「右」だの「保守」だのと騒いでいるだけで、当人にしてみれば、ただマットウなことをマットウに言っただけなのではないか・・と感じています。勝手なことを書きました。いずれにしろ、当該書籍が、福田恆存というオモシロイ人物を知る良い手引書であることはまちがいないように思います。
2015年9月1日レビュー
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福田恒存著「人間の生き方、ものの考え方」
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-05-01
養老孟司=野蛮人説?
(福田恒存著「人間の生き方、ものの考え方」から)
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-05-04
松岡正剛の千夜千冊
0372夜 『アウトサイダー』
http://1000ya.isis.ne.jp/0372.html