「反論の技術―その意義と訓練方法」香西 秀信著 明治図書出版 [言語学(外国語)]
「中身」の濃い書物です。
2005年3月13日にレビュー
少ない知見で恐縮ですが、ディベート関連の本を開きますと(入門書は特にそうですが)ディベートとは何か(定義)、その進め方は(方法)・・・という表面的内容のものが多いように思います。
「ディベートをいかに充実させ得るか」「いかに相反する立場の中から止揚した結論を引き出すか」など、議論の中身を濃いものとする具体的な提言をしている書物は少ないように思います。具体例を取り上げつつ、そのような提言をしようとすると、書籍が大冊になってしまうということも多分にあるのでしょうが・・・。
この本は、焦点が明瞭です。ズバリ「議論の本質は反論である」とブチアゲています。実例は豊富で簡潔です。反論の自修法も示されています。ギリシャの古典修辞学についての説明などは少々まわりくどいようにも感じられますが、それはそれで反論の技術を養成するための良い動機付けを与えるものとなっています。
この大きさの本の中に、これだけの「中身」をよく納めたものだと感心いたします。「議論の本質」を知り、その「技術」を磨く上でたいへん良い書物であると思います。お勧めいたします。