児童文学はどこまで闇を描けるか―上野瞭の場所から [児童文学]
「闇」の放つ光の魅力
2004年10月10日にレビュー
上質の文学作品ほど得体の知れない魅力に満ちているように思います。得体の知れないその魅力のゆえにまた、世代を越えて読み継がれてもいくように思います。
この著作で、取り上げられているペロー童話の「赤ずきん」などもそうした魅力、妖しい光を放つ物語と言えるでしょう。著者はそれを「闇」と表しています。
著者は「赤ずきん」「青ひげ」などを並べて論述し、それらの「闇」の持つ妖しい光をプリズムで分光し、解析して、見せます。
その解説が正解であるかどうか私は知りませんが、この解説もまた得体の知れない妖しい光を放つもので、そのことゆえにも私はこの著作を上質の文学作品(批評)であると思っています。
副題は『上野瞭の場所から』となっています。上野瞭は「ちょんまげ手まり歌」等で妖しい光を放った「児童」文学者です。