「絵画は眼でなく脳で見る―神経科学による実験美術史」小佐野重利著 みすず書房 [アート]
タイトルどおりの本で、新しい絵画の見方を示しているようなのだが、なんとなくメンドウクサイ。こちらに中途半端な神経科学、認知科学の知識があるためかもしれない。読んでいて「ああ、ミラーニューロンのことね・・」「トップダウン、ボトムアップ処理のことをいってるよ」など思いに浮かんでくる。既知と思われることを再び裏付ける論議に思えるからなのかもしれない。知識の重複と感じられるからなのかもしれない。話題は「チャンス・イメージ」やダ・ビンチの真贋定まらない作品のことや盲人の描いた具象画のことなど興味深いものが多く、歓迎すべきものなのであるが、なんとなく重荷に感じられるのである。
著者は、本書の趣旨を(『序章』末尾で)次のように書いている。「美術作品そのものに密着し、問いかけ、真相を語りたがらない作品が生み出された経緯や謎を探ること、それが美術史の醍醐味だと思っている。作品そのものから離れ、遠心的に隣接人文社会学領域へ研究を広げるのは、作品研究のあるべき方向を誤まらせる恐れがある。 / 筆者なら、作品そのものに向けて求心的に接近する方法を選ぶ。その方向を試みるべきだと思い立って十年近くになる。/ 本書は、その研究スタンスから美術作品に肉薄する方法を、美術と科学あるいは科学画像との親密性から説き起こし、分析化学、ひいてはニューロサイエンス(神経科学)との協同という観点から、ケーススタディのように解き明かす試みである」。
面倒くさく思えるのは、学術書ならではの読みにくさが関係している模様である。実験や他の論考への言及が多い。それをメンドウとせずに腰を据えて、示される「ケーススタディ」を丹念に読み解いていけばいいだけのことなのだろう。
芸術脳の科学 脳の可塑性と創造性のダイナミズム (ブルーバックス)
- 作者: 塚田稔
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/11/27
- メディア: Kindle版