小澤征爾,兄弟と語る [音楽]
小澤家のファミリーヒストリー。同時代として「昭和」を生きてきた方なら共感するところ大に思う。なんだそんなことで?と言われそうだが、甘夏が出回る前のすっぱい夏ミカンの話が出る。たいへん懐かしい思いをした。音楽・文芸を愛する知人の一家団欒の場に加えてもらったような読後感である。
小沢3兄弟の鼎談スタイルで話は進められる。皆、一家を成した方たちである。、文学者の2男俊夫(昭和5年生まれ)、音楽家の3男征爾(昭和10年生まれ)、俳優の4男幹夫(昭和12年生まれ)。皆、仲がいい。それぞれ経済的にたいへんな時期には、関係する方たちから目をかけられ愛され扶けられてきた。「運」といってしまえば、それまでだが、助けずにはいられなくなる人柄が関係しているようだ。人間性である。そうした人間性はどのように生まれたか、父親(開作)母親(さくら)の生き方の影響・大である。また、親の用意した教育環境も関係ある。自由にのびのび才能を羽ばたかせ、落ちそうになっても、いざという時に助けになってくれる友人・知人を得るため・得させるためにできることは何かなど考えさせられた。
「わが家に芸術を持ち込んだのは兄貴だもんね」と俊夫が言い、「わが家で一番芸術的だったのは兄貴だよ」と征爾がいう長男克己(昭和3年生まれ、56歳逝去)が、一家の負(マイナス)の部分を一身に背負ってしまったように感じる。彫刻家として一家を成さなかったかもしれないが、一家を成した弟たちの出世に一番貢献したのは「克己兄貴」のように思う。