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『渡部昇一の世界史最終講義 朝日新聞が教えない歴史の真実』 渡部昇一×高山正之 飛鳥新社 [世界史]


渡部昇一の世界史最終講義 朝日新聞が教えない歴史の真実

渡部昇一の世界史最終講義 朝日新聞が教えない歴史の真実

  • 作者: 渡部昇一
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2018/04/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


国際的に、より高い見地から歴史を見るために

副題の「朝日新聞が教えない歴史の真実」からも分かるが(とはいうものの、書籍・表紙にも目次にも、副題の記載はない)、世界史講義というよりメディア史・メディア論の印象が強い。太平洋戦争後、アメリカの占領政策にしたがって朝日新聞、NHKといったメディア・組織が利用され、(また、「敗戦利得者」たちの影響力によって)、今日まで、日本国民が「洗脳」され(誤まった歴史認識をもたされ)てきたことが強調されている。世界史的には、「悪辣な」アメリカと、日本に植民地を奪われ(それら植民地が解放され独立し)た結果「貧乏」になったヨーロッパ諸国、そして、度し難い国としての中国、韓国と、戦前・戦後の日本との関係が対談される。

であるから、「洗脳」されてきた個人が読むなら、啓発とともにショックを受けるにちがいない内容である。しかし、評者のすくない知識(アメリカ合衆国の歴史など)から推しても、受けいられないものではない。アメリカ移民後、彼ら・アメリカ人たちが先住民に対し、後に黒人奴隷やアジア系移民に対して行った処遇から、首肯納得させられるものである。また、本書で取り上げられている多くの事例(たとえばフィリピンをスペインから奪取するやり方、またその後の扱いなどなど)からいくなら、「悪辣」と評するに値する。そのアメリカを高山氏は「白いシナ」と呼んで中国と同列に置く。渡部氏はその理由として「封建時代」を経験していないことをあげる。(ちなみに「中世のないソ連とアメリカが第二次世界大戦を宗教戦争のようにしてしまったからです。宗派が違う敵は悪魔という、三十年戦争の姿に戻ってしまいました」という記述もある)。

個人にも批判の矛先は向けられる。ピュリッツアー賞を受け岩波書店から邦訳された『敗北を抱きしめて』の著者:ジョン・ダワー、本多勝一、慶大教授 添谷芳秀、早大名誉教授 後藤乾一。さらには、以下のような方々への話もでる。

〈渡部:(前半省略)東京裁判史観に取り込まれ、マッカーサーを賛美する半藤一利(文春・元専務)や保坂正康といった人たちが歴史認識の基調を握っているのは危ない。彼らは一所懸命、東京裁判の対象になった人たちに話を聞いて回ったけれども、それでは日本側の動きしか分かりません。 / 個々の戦闘で、日本軍がどうやられたかという話を集成すれば、東京裁判をなぞる結論になってしまう。その前に連合国側が何をしていたか、日本がそういう限られた条件での戦争や戦闘に、そもそもなぜ追いつめられたのか、という情報はシャットアウトしているわけです。 高山:そう、国際性がないんです。日本と米国の動きを上から俯瞰して、それぞれがどうやって動いたのか、その結果として戦争を見ないといけない。(p169、170)〉

半藤氏のことを、立花隆氏が「昭和の戦争をこの方以上に知る人はいない」というようなことをどこかに書いていた。また、保坂氏も同様の方である。しかし、本対談のお二方に言わせるとそういうことになるらしい。その評価について異論はあろうが、国際的に、より高い見地から歴史を見るという点で、本書は読むに値する。

2018年6月29日にレビュー

図説呪われたアメリカの歴史

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  • 作者: キーロン・コノリー
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/04/23
  • メディア: 単行本



国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

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  • 作者: 倉山 満
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2016/11/16
  • メディア: 新書



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