『川を歩いて、森へ』 天野礼子 中央公論新社 [エッセイ]
「オーパ!」
当初、タイトルから推して、ソローの『森の生活』のような静謐な世界に誘うエッセイかと思った。開高健とのつきあいもあるというので、文学的興味から手にしたのだが・・・
「オーパ!」である。開高健に『オーパ!』というブラジルへの釣り紀行があるが、そこには《何事であれ、ブラジル人は驚いたり感嘆したりするとき、「オーパ!」という》という一文があった。本書を読んでの印象は、まさしく「オーパ!」であり、そして「オーパ!」であった。
内容からいえば、著者の半生記といっていい本書だが、読んで思い浮かんできた言葉は、「女・小田実だア!」である。日本の河川3万本を保護していこうとするその行動力には凄いものがある。長良川河口堰反対運動では開高健、C・W・二コルを担ぎだし、林野庁の林業再生では「大阪に天野さんというすごい女性がいるから」と養老孟司の推薦を受けて動き、養老さんを会長、自分は事務局長に座って、がんばっている。脳動静脈奇形という病気をかかえながら、時々気絶しながら、である。
森が海を育てる話はかねて聞いていたが、サケ(鮭)が森を育てる話がでる。「面会謝絶」の開高を探しだして見舞う話もある。著名政治家たちとの人間味ある話も出る。元気の出て来る本だし、元気を出さないといけないと思わせる本でもある。
2017年3月25日にレビュー
『自由人の条件』開高健(その1)
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-03-29