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『パリの福澤諭吉 - 謎の肖像写真をたずねて』山口 昌子著 中央公論新社 [外交・国際関係]


パリの福澤諭吉 - 謎の肖像写真をたずねて

パリの福澤諭吉 - 謎の肖像写真をたずねて

  • 作者: 山口 昌子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2016/11/16
  • メディア: 単行本


遣欧使節に随行した福澤諭吉の足跡を丁寧・緻密に追った労作

遣欧使節に随行した福澤諭吉の足跡を丁寧に追った労作。当時の福澤の立場-外国語を学び使節一行に加えてもらうための努力-派遣された一行の面々の素顔-江戸時代末期の世相-出向いた先パリの状況など 詳しい。福澤の心理に分け入った叙述もなされているので、読んでいくと進取の気象に富む若い福沢に自分がなった気分になってくる。

『福翁自伝』を読んで、さすが壱万円の顔になるだけのことはあると思ったが、本書を読んで「流石」の思いを新たにした。「自伝」は、主観的記述がどうしても多くなるが、他者の「評伝」は客観的に対象を捉えようとする。おのずと対象者を取り巻く種々相を取り上げ記述せねばならない。本書は、その取り上げ方が、たいへん緻密である。

対象者の事績を取り上げるだけでなく、読む者にある種の気概を与え感興を呼び起こすものを一級とするなら、本書は、福澤諭吉の評伝としてまちがいなく一級を与えていいように思う。(以下、引用)

諭吉がパリに旅してから百五十年余り。パリの街並みはナポレオン三世の号令で実施された「オスマン男爵(セーヌ県知事)の大改造」以来、ほとんど変わっていない。諭吉らが宿泊したホテルの石造りの建物をはじめ、・・略・・そのままだ。/ 諭吉もこうした光景を目撃したのかと思うと、タイムマシンに乗って、百五十年前のパリに降り立ったような気分になる。また、二十一世紀を迎えた今、何回目かのあらゆる意味での“開国”を前に下級武士・諭吉が日本の未来を見据え、思索家として言論人として「日本のヴォルテール」といわれるに至ったパリでの日々を追うことは、「咸臨丸」以上の冒険物語でもあるはずだ。そして、それは同時にパリでただ一回、撮影され、フランス人の人類学者ジョゼフ・ドゥ二ケールが「日本人の典型的な知識階級の顔」として自著に紹介した「一万円札の肖像画になる前の無名の青年武士の肖像写真」が放つ、激しいオーラの源を探り当てることにもなりそうだ。(「序章」末尾部分の引用)

2017年1月27日にレビュー

「品格」を身に着けるために(2)福沢諭吉先生のこと 
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2007-03-09


新訂 福翁自伝 (岩波文庫)

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  • 作者: 福沢 諭吉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/10
  • メディア: 文庫



あらゆる文士は娼婦である:19世紀フランスの出版人と作家たち

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  • 作者: 石橋 正孝
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2016/10/15
  • メディア: 単行本



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