『寝るまえ5分の外国語:語学書書評集』 黒田 龍之助著 白水社 [言語学(外国語)]
101本目の書評、お引き受けいたしましょう
本書は、語学書の書評の集成。「白水社創立101年目を記念して、101本の書評を目指したのだが、実際にはコラムを合わせても100本しかない。最後の101本目は、自分で書いてみていただけないだろうか(「おわりに」)」と、著者は、読者に呼びかけている。おわりまで、ずっと読んでくると、「ならば、では、101本目、お引き受けいたしましょう」という茶目っ気を起こさせる内容だ。
当初、書籍タイトルを見て、「『5分』で寝つく助けになるのではないか」と思ったが、残念なことに、そうならない。目がさえるというほどでもないが、全然その点、有効ではない。睡眠薬代わりにはならないので、その目的で読もうという方はご注意されたし。
本書は5部構成( 1:語学書は書評できるのか、2:語学書のことば、3:失われた語学書を求めて、4:101年目の語学書たち、5:隣の語学書は赤いか青いか )となっている。書評は、1冊につき、おおむね見開き2ページにまとめられ、巻末には、書評された書籍の表紙写真が紹介されている。
たとえば、『フィリピノ語文法入門』の書評では、『王道はいつでも同じ』とタイトルされ、著者が「すみずみまで暗唱するまで学んだ『標準ロシア語入門』」との同一性が強調され、《つまり本書は語学書の王道なのである。// だとしたら勉強法も想像できる。やり方はこうだ。まず単語および例文を発音して、先生から丁寧に直してもらう。音読しながら例文すべて暗記する。簡単な単語テストで綴りを確認して、それから音声教材を聴きながら和訳練習。さらにはその逆訳ということで、日本語を読み上げてもらってそれを外国語に直す。最後は学習した例文を使って会話をする》。
しかし、そのような語学勉強法ばかりに焦点が当てられているわけでもない。関連言語の特徴、学ぶうえでの苦労談などがユルイ縛りで記されていく。ユーモアもあって、なかなか楽しい。そんな中には、厚かましいネコの話や、ビール大好きのロンさんの話もでてくる。
異色の本としては『カモ少年と謎のペンフレンド』という小説が取り上げられている。著者はいう「外国語学習のやる気を起こさせる本はすべて語学書である。そう考えれば、本書は紛れもなく白水社の語学書の一冊だ」とある。
そういうことであれば、本書も紛れもなく語学書の一冊である。多言語を学習して、新たな視点を得、他国の文化を知りたいと願う人なら、だれでもやる気を起こさせられ、益を得られるにちがいない。
2016年10月20日にレビュー
「ことばへの異常な愛情」
黒田龍之介先生講演会・講演録
http://www.sanshusha.co.jp/kuroda/index.html
カモ少年と謎のペンフレンド (白水uブックス―海外小説の誘惑)
- 作者: ダニエル ペナック
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
辞書なしで英語が読める―童話、旅行ガイドから推理小説まで (カッパ・ブックス)
- 作者: 藤田 悟
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 1982/05
- メディア: 単行本