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[ブックガイド] 東大教師が新入生にすすめる本(東京大学出版会「UP」編集部ー編) [読書案内]


ブックガイド 東大教師が新入生にすすめる本

ブックガイド 東大教師が新入生にすすめる本

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2012/04/24
  • メディア: 単行本


東京大学出版会の宣伝誌「UP」4月号に掲載された1988~2011年までのアンケートの結果

本書には改訂版(姉妹版)がある。本年刊行された『東大教師が新入生にすすめる本 2009-2015』だ。どちらも、東京大学出版会の宣伝誌「UP」4月号に掲載したアンケートをまとめたものだ。アンケート設問は①「私の読書からー印象に残っている本」、②「これだけは読んでおこう」、③「私がすすめる東京大学出版会の本」など。

本書は、1988(昭和63年、昭和天皇崩御の前年)から2011年(平成23年、東日本大震災の年)までの分をまとめて編集したもの。設問①、②に回答された本が約2400冊。③への回答は約1000冊。そのうち①、②への回答として多数登場した書籍のランキングリスト(66冊)をもうけ、そのうち約50冊には、なぜ新入生に勧めるのか、読むべきなのか諸先生に新たに執筆「書きおろし」を依頼したもの。

意識するしないに関わらず東日本大震災のことは各執筆者の思いに去来したであろう。明らかなものとしては、『罪と罰』(沼野充義評)。《いずれにせよ、この作品は激しい愛と信仰と思想のドラマであり、そのすべてを表現する精緻な言語芸術のシャワーを浴びることを通じて、私たちは希薄になりつつある生の実感に迫ることができる。そして、政治家や高級官僚や大企業の経営者の中に、そういう読書体験を経た人間が少しでも増えれば、この世の中も少しはよくなるのではないか。冗談ではない。大震災や原発事故以後の日本を見ていると、つくづくそう思う》。

[ベストブック1988-2011(回数はアンケート回答に登場した数)]

1位=11回 (『カラマーゾフの兄弟』、『資本論』、「底本 解析概論』高木貞治)

2位=10回 (『方法序説』、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』)

3位=9回 (『定本 想像の共同体』ベネディクト・アンダーソン)

4位=8回 (『オリエンタリズム』E・W・サイード、『科学革命の構造』トーマス・クーン、『ファインマン物理』)

5位=7回 (『罪と罰』、『歴史とは何か』E・H・カー、『職業としての学問』、『現代政治の思想と行動』丸山眞男、『ゲーデル・エッシャー・バッハ』、『理科系の作文技術』木下是雄、『種の起源』、『利己的な遺伝子』、「三国志」)

6位=6回 (『国家』プラトン、『聖書』、『ソクラテスの弁明』、『邪宗門』高橋和己、『戦争と平和』、『ドン・キホーテ』、『自由からの逃走』、『職業としての学問』、『物理学とは何だろうか』朝永振一郎、「ご冗談でしょう、ファインマンさん」)

7位=5回 (『存在と時間』、『ツァラトゥストラ』、『日本の思想』丸山眞男、『紅楼夢』、『徒然草抜書』小松英雄、『危機の二十年』E・H・カー、『チーズとうじ虫』カルロ・ギンズブルグ、『細胞の分子生物学』Bruce Albertsほか、「荘子」、「ジャン・クリストフ」)

8位=4回 (『監獄の誕生』、『善の研究』、『文明論之概略』、『論理哲学論考』、『アンナ・カレーニナ』、『生きがいについて』神谷美恵子、『失われた時を求めて』、『それから』、『三四郎』、『知の帝国主義』P・A・コーエン、『悲しき熱帯』、『リヴァイアサン』、『ホーキング、宇宙を語る』、『二重らせん』、『夢判断』、「知的生産の技術」梅棹忠夫、「西遊記」、「日本人の英語」M・ピーターセン、「ペスト」、「ヨーロッパ文学とラテン中世」E・R・クルツィウス、「ことばが劈かれるとき」、「つきあい方の科学」R・アクセルロッド、「忘れられた日本人」、「エビと日本人」村井吉敬、「科学哲学の形成」H・ライヘンバッハ、「数理物理学の方法」R・クーラン、「量子力学」朝永振一郎、「ソロモンの指輪」)

全体の50ページほどを用い、上記(『・・』部分の書籍)に、各2段組1ページの解説を当て、(「・・」書名書籍は解説なし)、残りのほとんどは、各年ごとのアンケートに回答された書籍名と著者名、出版社名の列挙羅列。年毎の、いわゆる流行(ハヤリ)スタリがわかる。「古典」となって残るのは難しいものだということもわかる。

2016年8月19日にレビュー

東大教師が新入生にすすめる本 2009-2015

東大教師が新入生にすすめる本 2009-2015

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2016/03/26
  • メディア: 単行本



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