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『 バイオアート―バイオテクノロジーは未来を救うのか 』ウィリアム・マイヤー著 ビー・エヌ・エヌ新社 [アート]


バイオアート―バイオテクノロジーは未来を救うのか。

バイオアート―バイオテクノロジーは未来を救うのか。

  • 作者: ウィリアム・マイヤー
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2016/05/24
  • メディア: 単行本


世界に対して疑問を持つよう、別の視点が提示され、価値観の新陳代謝を促される

カバー・帯に見慣れぬ言葉が記されている。「人新世」だ。Antheropecene の訳語で、地質学的区分を指すものらしい。序文(スザンヌ・アンカー筆)によると、ソレは「人間の活動が自然界に決定的な影響を及ぼす時代」とあり、特に、「核やプラスティックが氾濫し始めた1950年以降の」ソレを指すものとあるので、まさに我々の生きている今が、「人新世」であり、それゆえにも、「人新世」を生きる者(アーティスト)に共有されるべきは「危機意識」ということになり、その関係でタイトルにある「救い」も出てくるようだ。

スザンヌ・アンカーは「バイオアートとは、合成生物学、生態学、生殖医療といった分野の要素を取り入れた芸術的実践を包括的に示す用語」といい、著者ウィリアム・マイヤーズは、「生物学を表現メディアとして利用し、作品を通して、生物学自体の意味や自然の変化に目を向けるものだ。作品はシャーレの中かもしれないし、写真かもしれない」と記している。そして、そこに含意されるのは「ときに批判であり、ときに皮肉であり・・」、そのようにして「既成概念を見直すことに関心を向ける」のがバイオアートであるとある。

以上、スザンヌ・アンカーと著者の言葉からツギハギしたが、本書出版にあたって特別寄稿している長谷川愛は『スペキュラテブ・デザインとバイオアート』と題する文章のなかで、「既成概念を見直すことに関心を向ける」バイオアートの特徴を、より明確に、一般化し、次にように綴っている。《私たちは(世界に対して疑問を持ち)、別の視点を提示し、価値観の新陳代謝を活性化すべく議論することが必要だと思える。そもそも何を「よし」として世界を作っていくのか、その判断は誰がどのようにするのかについても私たちは意識してゆかねばならない。そこに対して効果的に訴えることができるのが、アートやデザインの力なのではないかと思う》。

そのような意図のもとに創作している50人の作家たちが作品とともに紹介されていく。解説は詳しく、写真は鮮明である。その多くが、ギョッとする作品だ。ギョッとするということは、新たな視点を提供され、価値観の新陳代謝が促されていることの証拠と言えるだろう。そういう意味で、久しぶりに、まさにアートに出会ったという思いでいる。

2016年7月29日にレビュー

バイオアートは、未来を救う(気がしてきた)
出版記念イベントレポート
http://www.loftwork.jp/column/2016/20160614_bioart.aspx

「猥褻:わいせつ」とはなにか?
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-02-19-1
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