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『ニッポンの書評』 豊崎由美著 光文社新書 [読書案内]


ニッポンの書評 (光文社新書)

ニッポンの書評 (光文社新書)

  • 作者: 豊崎 由美
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 新書


ライターあがりプロ「ニッポンの書評」家による(2011年時点における)一書評論・・・

当初、日本の書評文化について示す学術書かと思い手にした。日本の書評の過去や現在、新聞・雑誌への掲載状況、さらには、外国のそれとの比較を通して日本という国を照らしだす書籍のように思った。

実際のところは、(たしかに、そのような記述も示されてあるが)、《一(イチ)「ニッポンの書評」家による一(イチ)書評論》と言った方がいいような本だ。著者自身の言葉を借りるならば、批評家ではなくライターあがりの、さらにはアマチュアではなくプロの・・という文言を書評家の形容詞として付加できるにちがいない。そして、書評論の前には「2011年時点における」という句も付加できる。

著者は、このことに特別異議を申し立てることはないだろう。「あとがき」に《わたし同様、今現在書評を書いている同業者の皆さんから異論があっても当然と思います。面白い書評はあっても、正しい書評はない。だから、書評論はレビュアーの数だけあっていい。わたしは、そう考える者です。この本が問題提起となって、たくさんの論が生まれたら、こんなに嬉しいことはありません》とある。

しかし、それにしては、けっこうアチコチ(同業者やその仕事、アマチュア書評)に猛然と噛みついている。そこが本書のオモシロイところでもある。『新書』という教養主義的ウツワから推すと、どうかと思えるところもあるが、もともとは出版社PR誌に 『ガター&スタンプ屋ですが、なにか? わたしの書評術』 として連載されたものだという。PR誌の読者を対象にサービス精神を旺盛に発揮しオモシロくされたのだと思う。また、「あとがき」を書く段になって、そのオモシロさが誤解されることを敬遠し、トンガッタ処をすこしマルくしようと上記引用のように認めたのカモしれない。

一言でマトメルなら「わたしは、日々こんな風に本を読み、書評を書いています」ということが言いたいのだろう。《書評というものは、まずはなにより取り上げた本の魅力を伝える文章であってほしい。読者が「この本を読んでみたい」という気持ちにさせられる内容であってほしい。自分の考えを他者に伝えるための容れ物として対象書籍を利用してはならない。書評は作家の機嫌をとるために書かれてはならない。自分自身への戒めとして記しておきます》と(第2講 末に)記されている。いい自戒の言葉だと思う。

なんだかだ言って、「書評」について考えるに際し、参考になる本である。

2016年7月27日にレビュー

書評大全

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 三省堂
  • 発売日: 2015/03/28
  • メディア: 単行本



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