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『骨とはなにか、関節とはなにか:骨と関節の不思議な物語』 伊藤 宣著 ミネルヴァ書房 [医学・健康]


骨とはなにか、関節とはなにか:骨と関節の不思議な物語 (シリーズ・骨の話)

骨とはなにか、関節とはなにか:骨と関節の不思議な物語 (シリーズ・骨の話)

  • 作者: 伊藤 宣
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2016/05/15
  • メディア: 単行本


専門性は高いのに、論理的でわかりやすい

骨と関節に興味がある。より高度な運動能力を身につけたいと思うからだ。そうしたパフォーマンスを高めるために、ある程度専門性の高い知識を提供してくれ、かつ、読んでやさしい書籍はないものかと思っていたのだが、この本は求めているものに適う。もっとも、著者自身は《骨・関節の構造はどういう構造なのか。どのような役割を担っているのか。どのようにできて、また衰えるのか。「怪我」や「病気」の時、私たちはどうしたらいいのか》といった疑問に、《できるだけ率直に答えようとするのが本書であ》り、《特に本書では、骨や軟骨、関節の根本的な構造、発達、役割、機能について述べ、それらの知識を元に、骨・関節の代表的な疾患について述べたい》と記している。そして、《骨の基礎医学についてさらに学びたい方や、自分の身体の機能をより高めたいという方には、それぞれ素晴らしい参考書が存在する。それらの本を参考にして、その道を追究されたい》とあるが、これだけ専門性の高い情報が提供されているのであれば、もはや必要はないと当方は感じる。

専門書(解剖学等)をあたっても指摘される部位と名称はわかるが、全体の関連性が見えないということがある。さらには、それが、実際の運動とどう関わってくるのかシロウトにはわからなかったりする。しかし、本書においては以下のような具合である。(本書の難易度がどれほどか実感できると思うので引用してみる)。《またヒトにおいて、上腕は下垂位から頭上に至るまで180度動かすことが可能であるが、肩甲上腕関節自体には120度の稼動域しかない。残りの60度は、肩甲骨と肋骨の間で動くことにより達成される。この肩甲骨と胸郭との接続面を肩甲胸郭関節とも呼ぶ。解剖学的な意味では関節ではないのであるが、機能的に関節と同様の働きを持つために関節と呼ぶのである。このように二つの関節(肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節)が2対1の割合で動くことで肩の挙上運動を果たしていることを、肩甲上腕リズムという(図3-4)。これは肩のスムースな動きに重要で、肩の動きが悪い場合、いずれの関節に問題があるかみきわめることが大切になる》。この解説には、図が付されていて、説明とあわせて見ればわかるようになっている。

本書は「閑話休題」的コラムも多数用意され、ほどよい息抜きがもうけられて、読みやすい。読者と対話するかのように、叙述が進められており、このように書けば、こういう疑問を読者は抱くであろうことをたいへん意識して成った本であるように感じる。なによりも、それが、専門性が高いのに、論理的でわかりやすい本を生んだ所以であるのだろう。

我々は皆、生れ、生活し、年老いていくが、骨と関節に関し、(自分の体のなかで)これまで何が起きてきたのか、現に起きているのか、これから何が生じうるのか承知したうえで、生活しようとの願いを抱く方であれば、病気のあるなしに関わらず読んでおいて損はないように思う。

2016年7月15日にレビュー

究極の身体 (講談社+α文庫)

究極の身体 (講談社+α文庫)

  • 作者: 高岡 英夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/20
  • メディア: 文庫



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