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『インフォグラフィックスの潮流: 情報と図解の近代史』永原 康史著 誠文堂新光社 [アート]


インフォグラフィックスの潮流: 情報と図解の近代史

インフォグラフィックスの潮流: 情報と図解の近代史

  • 作者: 永原 康史
  • 出版社/メーカー: 誠文堂新光社
  • 発売日: 2016/02/01
  • メディア: 単行本


情報の視覚化の近代史

当該書籍は、副題にもあるとおり「情報と図解の近代史」です。それは「情報の視覚化の近代史」と言い換えることができそうです。

「インフォグラフィックスの潮流」という主題については、こう説明されています。《『インフォグラフィックスの潮流』とは、絵が図になり、グラフになり、ダイアグラムになり、そしてインフォグラフィックスと呼ばれるに至るまでの流れのことです。それは、絵によって「絵以前のもの」があらわされ、それによって何かが伝わり、人びとの理解や発見を助けるようにと、表現が変化していく流れでもあります》。

第1章は、産業革命を先駆けた19世紀ロンドンの都市交通網の話から始まります。そこで用いられた地図が話題となります。そこでこんな記述があります。《(1890年頃から)既存の(実際の)地図に路線を書き込んだ程度の路線図(図11)やヴィクトリア朝様式の時刻表(図12)こそ存在しましたが、「絵」や「表」にとどまっており、「図」には届いていません。ましてや「言語」にはほど遠いものでした》。《20世紀に入ると、その地図も少しずつダイアグラム化されていき》《1908年ごろから駅の案内板や車両内部にダイアグラム(図17)が登場します》そして《1933年、まったく新しい路線図 『(通称)ベックマップ』が登場します。それが《世界中の路線図の姿を一変させたことはよく知られています》。

情報・知識を可視化する人類の営みの歴史については、『THE BOOK OF TREES―系統樹大全:知の世界を可視化するインフォグラフィックス』という書籍もあります。そこでは800年の歴史をたどり、200余りの図版が用いられています。特に「系統樹」に焦点をあてた興味深いものです。ですが、それは、どちらかというと網羅的です。それに対して、当該書籍の魅力は、その解説です。当書も多数の図版が用意されていますが、その魅力は、物語性と言っていいように思います。著者の言葉をそのまま借りるなら、(読者の)「理解や発見を助けるようにと、表現が変化していく」流れ(“話の筋”)の魅力です。すべての章をとおして著者の思いは一貫しているように見受けられます。

終章末を引用します。《私は、視覚表現をさかのぼると四つの行為に行きあたると考えています。「描く」「写す」「数える」「伝える」です。「描く」は動物たちなどを描いた「洞窟壁画」。「写す」はやはり洞窟に残る手形「ネガティブハンド」。「数える」はくさび形の印が刻みつけられた「トークン」。「伝える」は「象形文字」にそれぞれさかのぼることができます。人間にとって目から入る情報は全体の8割を超えるといわれていますから、文明が起こる以前から、人は自分の外の「世界」と視覚的に“交流(インタラクション)”しようとしていたのだと思います。// そういう行為のつづきが今日のインフォグラフィックスであるとすれば、「図」を介在して起こる「人」と人を取り囲む「世界」とのインタラクションこそが情報視覚化の変化要因なのでしょう》。

言語によるものも含め「表現」というものについて考えるよい機会となったことを報告したく思います。

2016年6月17日レビュー

THE BOOK OF TREES―系統樹大全:知の世界を可視化するインフォグラフィックス

THE BOOK OF TREES―系統樹大全:知の世界を可視化するインフォグラフィックス

  • 作者: マニュエル・リマ(Manuel Lima)
  • 出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社
  • 発売日: 2015/03/10
  • メディア: ペーパーバック



世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生

世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生

  • 作者: 大田 暁雄
  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2021/12/17
  • メディア: 単行本



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