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『怪物的思考 近代思想の顛覆者ディドロ』田口卓臣著 [人文・思想]


怪物的思考 近代思想の転覆者ディドロ (講談社選書メチエ)

怪物的思考 近代思想の転覆者ディドロ (講談社選書メチエ)

  • 作者: 田口 卓臣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/03/11
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



貴方も、「怪物」になれるかも・・

いまどき啓蒙思想家のディドロなんて・・と思いもしたのだが、「怪物的思考」という言葉にからめ取られたのである。「近代思想の顛覆者」に魅了されたのである。表紙絵はギュスターヴ・モローの『ヘラクレスとレルネのヒュドラ』。これを読むなら、9つの頭を持つ怪物ヒュドラに変身することができるかもしれない。さらには、キングギドラよろしく精神の飛翔を経験し、人欲にまみれ汚染された地球を顛覆する視座をもつことができるかもしれないとの妄想を抱いたのである。

ヒュドラ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%A5%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC

ゴジラvsキングギドラ
https://www.youtube.com/watch?v=mETuXdAuZbE

著者はディドロの語りに注目する。その思想「学説」よりも、その語り口・方法をクローズアップする。「さまざまな『他者の言葉』を契機として、そのつど多方向に増殖していくディドロならではの思考の散逸性」「彼の言葉の運動・・」を把握するために、ディドロの初期の代表作『自然の解明に関する断想』を取り上げる。それを精読し、文学的表現や修辞技法を分析する。

そうする、思想史的意義は、「『啓蒙』をめぐる三つの思想史的レッテル(1:「理性信仰」、2:「実験哲学」、3:「言葉と物の一致」)に対する異議申し立て」である。また、そうする今日的意義の一つは「実証主義的な科学の精神から逸脱していく思考の運動」を特徴とするディドロの作品をとおし、「帰納の手続きによって抽出される『法則』の価値中立性」に対する彼の「一貫し」た「懐疑の眼差し」を読みとることである。「実験諸科学の生成期にあって、一方ではそれらの科学の可能性を高く評価しつつも、他方ではそれらに宿された原理的な限界を見据えようとしたディドロの思考は、私たちにとっても無縁であろうはずがない」。

最終章を、著者は次のように締めくくる。「だから今日、思想史の森のなかからディドロの言葉の炸裂音を聴きとることは、「啓蒙」に絡めとられた無数の『怪物的思考』の断片を、近代科学の実証主義によって抑圧された『想像力』の飛翔を、もう一度私たちのもとに取りもどすことを意味しているのである」。

あわよくば、読者各自、「想像力」をもって飛翔し、当代のキングギドラになれるかもしれない。

2016年5月17日レビュー

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「サンダ対ガイラ」をひととおり見て
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12

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編集者ディドロ

編集者ディドロ

  • 作者: 鷲見 洋一
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2022/04/27
  • メディア: Kindle版



ディドロ限界の思考―小説に関する試論

ディドロ限界の思考―小説に関する試論

  • 作者: 田口 卓臣
  • 出版社/メーカー: 風間書房
  • 発売日: 2009/12
  • メディア: 単行本




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