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『物理学は歴史をどう変えてきたか』 アン・ルーニー著 東京書籍 [物理・化学]


物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

物理学は歴史をどう変えてきたか:古代ギリシャの自然哲学から暗黒物質の謎まで

  • 作者: アン ルーニー
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2015/08/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



これが物理の教科書であれば・・・

たいへん読みやすい本です。そして、わかりやすい。著者は「児童書作家の会」にも参加する二児の母ということです。そのことも関係しているのでしょうか・・・。図版、写真、コラム等もたいへん充実していて、それらの無いページがナイくらいに配置されています。ですから、理数系を苦手とする方も、単なる「読み物」として十分に楽しむことができると思います。数式も出てはまいりますが、こちらは図版に比べるとほとんどナイと言っていいほどありません。いくつかある数式の一つは、次のような紹介の仕方で出ています。〈アリストテレスの発見は、アルキメデスが約1世紀後に証明する「てこの法則」の先駆となった(もっとも、法則自体はアルキメデスが確認する前からよく知られていたのだろう)。//現代では、この証明は、秤の一方の側の(分銅の重さ)×(支点からの距離)が、もう一方の側の(分銅の重さ)×(支点からの距離)と等しいという形で表される。式にするとこうなる。 WD=wd アルキメデスはこれを比の視点から表現した。おそらく、重さと距離という、種類の違う尺度の掛け算は受け入れ難かったのだろう。比で表すと、てこの法則は次のようになる。 W:d=wD 〉という具合です。ずっと読みすすむにつれ、物の理(ことわり)を探求する過程で、「ムカシは、こんなバカなことを信じていたんだ」という発見が多々あります。驚きをおぼえます。そしてまた、そのバカなことが新発見で訂正されて・いく(きた)様子を知ることができます。その探求の過程は、最近の弦理論やM理論にも及びます。当該書籍をとおして、物の理(ことわり)に関する最新情報も、後には訂正され「書き直される」可能性のあるものと見なすことが“自然に”できるようになるように思われます。ものごと全体をそのような余裕をもって見ることができるようになるというのは、一つの知的財産と言っていいように思います。この本が物理の教科書で、古来今日までの歴史をたどる仕方で、実験をしつつ、物の理(ことわり)を、学び考える授業ができたなら、そぞかしケッコウなことであるように思うのですが・・・。

2015年11月7日レビュー



数学は歴史をどう変えてきたか: ピラミッド建設から無限の探求へ

数学は歴史をどう変えてきたか: ピラミッド建設から無限の探求へ

  • 作者: アン ルーニー
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2013/05/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



医学は歴史をどう変えてきたか:古代の癒やしから近代医学の奇跡まで

医学は歴史をどう変えてきたか:古代の癒やしから近代医学の奇跡まで

  • 作者: アン ルーニー
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2014/08/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


目次 
はじめに 宇宙という書物
(固体物理学の誕生/経験主義から実験へ/科学革命/科学協会/科学の最強ツールは人間の頭脳)

1 物は何でできているのか
最初の物理学者?(物質の種/精神が物質に生命を与える/すべては変わる/切り分けられない/物と、物でないもの)
原子でできた物質、元素でできた物質(四大元素プラス1/変化とはどういうことか/インドの原子論/イスラムの原子論/原始からコーパスルへ/原子論への回帰/理性の時代)
固体物理学の誕生
原子と元素(すべては比率の問題/原子ー真か偽か/原子は分割可能か)

2 光を操るー光学の歩み 
初めて光に目を向けた人たち(光と遊ぶ/神の光)
闇の中から(ガラス越しの輝く世界/エーテル内の圧力)
光の王アイザック・ニュートン(フックの「顕微鏡図譜もすごい/波か、粒子か)
波派が優勢に(ヤングの2重スリット実験)
新たな夜明けー電磁波(エーテ理論の最期ーマイケルソン-モーリーの実験)
光の速さで(真っ直ぐが正しいとは限らない/そして電磁スペクトルの一部に)

3 質量の動きを記述するー力学の歩み 
建築現場での力学(古代ギリシャの力学)
動力学の問題(地球貫通トンネル)
古典力学の真の誕生(斜面を使ったガリレオの実験/止まるということ、動き出すということ/達人のことば/運動と重力/そして宇宙は実験場に)
空気と水(水から水銀へ/流体力学/流体と質量をひとつに)
力学の応用(ニュートン力学を新たな地盤に/慣性と重力がひとつに/大きなものと小さなもの)

4 エネルギー  場と力
エネルギーは保存される(「エネルギー」の発明/火との格闘)
熱力学(熱力学の法則/絶対零度)
熱と光(黒体放射とエネルギー量子/ほかの形態のエネルギー)
電気の発見(凧と嵐/電気実験が流行に/電気に仕事をさせる/磁気)
電磁気ー電気と磁気がひとつに(新しい電磁気の時代の夜明け)
さらなる波(放射線/必要とされた原子)

5 原子の中へ
原子を解剖する(プラムプエディングと太陽系/土星型モデル)
一時の気休めだったものが(賢い光/これもニュートン級/波動か粒子か/確実ということはあるのか/コペンハーゲン解釈/箱の中のネコ/宇宙がたくさん/量子のもつれーアインシュタイン=ポドリスキー=ローゼンのパラドックス/さらなる亜原子粒子を求めて/つなぎとめるもの)
物は壊れゆく(連鎖反応を操る)
古典的原子の終焉(物質と反物質/幽霊粒子/最後の失われた粒子/星からの粒子)

6 星に手を伸ばす
星と石(古代の天文学者)
「見る」から「考える」へ地動説の復活(すべては変わる/ヨハネス・ケプラー 1571年-1630年/2人は1人のためにープラハの天文学者)
見えないものが見えるように
達人ガリレオ(神との戦い)
夜空のカタログを作る(もっと、もっと見る)
はるか遠くを測る(彗星の本当の通り道/歴史上のハレー彗星/分光法ー物を見るための新しい方法/虚空を覗き込む/星からのストライプ)
星たちの知られざる生涯(虚空に耳を傾ける/クエーサー 強く遠くに/高く、高く、そして遠くへ)

7 つながる空間と時間
短い時計の歴史(時は移り、巡り、立ち止まる/空間と時間が結びつく)
すべては相対的(はるか彼方はずっと昔)
では宇宙の始まりは(混沌から/現代の宇宙)
宇宙の卵からビッグバンへ(星はいくつあるのか/観測できる宇宙はどこまで/宇宙はいくつあるのか/あとは下り坂)

8 未来の物理学
破り捨てては書き直す(これですべてなのか/暗黒エネルギー)
次はどこを探せばいいのか(この道はどこまでも)

索引(人名 事項)

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