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明治維新とキリスト教(カトリック)との関係(『靖国誕生』から抜書き) [日本史]


靖国誕生 《幕末動乱から生まれた招魂社 》

靖国誕生 《幕末動乱から生まれた招魂社 》

  • 作者: 堀 雅昭
  • 出版社/メーカー: 弦書房
  • 発売日: 2014/12/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



以下、上記書籍からの引用

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これからはじまるのは関ヶ原敗戦体制下の長州藩を軸に、維新革命から靖国神社成立までの青山家と青山上総介(清)の数奇な足跡を追う旅である。(序章p15)

(萩キリシタン殉教者記念公園のキリシタン墓碑と幕末から明治初期にかけて造られた招魂碑の形状とが似ているのを受けて)果たして招魂祭の起源は何であろうか。//古くは『日本書紀』の天武天皇14年「冬10月」に「天皇の為に招魂(みたまふり)しき」と見えるが、明治維新との関係では江戸時代の国学者・伴信友が『比古婆衣』で記したつぎの一文が興味深く思える。//「後醍醐天皇 日中行事に、日毎のせうこんの御祭、今は定まれる事なり、とあるせうこんは招魂にて、こは鎮魂にはあらず、陰陽家にて別に招魂祭とて為る方なるべし、撮壌集に、外典陰陽部に、招魂祭と見えたる此あるべし」//明治維新期に長州国学者・青山上総介たちが山口明倫館で斎行した楠公祭の主題が後醍醐天皇であった。南朝の初代天皇を護った楠木正成を顕彰する形で、滅びた南朝を復活させる動きが背景にあった。そのシンボルたる後醍醐天皇が毎日行っていた招魂祭は鎮魂祭ではなく、陰陽家が行った招魂祭と同じとしているのである。後醍醐天皇は幕府調伏のため自ら護摩を焚き、密教法具の三鈷杵を手に持っていた。陰陽家と同じ招魂祭もこうした倒幕行事のひとつであったのだろう。むろん後に「七生報国」と変容する「七生滅敵」の思想とも表裏一体であったにちがいない。そんな招魂祭が、まさに幕末、楠公祭と共に長州藩で復活するのだが、もしかするとキリスト教のイースター(復活祭)のように殉教者の復活を希求し、祈る祭りであったのかもしれない。魂不滅の信仰はキリスト教ともよく似ている。(1章p19)

キリシタン史家の海老沢有道は、キリスト教文化(洋学)が国学と一体化し、幕末に倒幕エネルギーに転嫁されたと語っている。むろん禁教鎖国時代なのでキリスト教はストレートには輸入できず、中国経由で漢訳され、陽明学の形で日本に持ち込まれた。そして本居宣長が国学を体系化する際も、儒仏思想を排撃する際に輸入されたキリスト教が大きな影響を与えていた。国学側が単なる古典訓詁学では対抗できず、「儒仏世界観の打破者として勢力を伸ばしつつあった洋学を、国学の思想体系に取り入れ、日本古来の思想を実証的に科学的に再編成する方向にむかった」(『切支丹風土記』「付録1 切支丹と神道」)からだ。//なかでも露骨にキリスト教を神道に導入し、読み直したのが平田篤胤であった。文化3(1806)年にまとめた『本教外編』はキリスト教と国学の合体で、こうした神基集合思想が、仏教を主(本地)、神を従(垂迹)とする神仏習合や本地垂迹説への対決意識となり、檀家制度により幕府の支配装置になった仏教寺院勢力を排撃し始める。青山上総介がキリスト教的「神の前の平等」意識に彩られた招魂祭を幕末にリードした背景を考えるとき、神官もまたキリスト教同様に檀家制度の埒外に置かれていた事実を知る必要があろう。安丸良夫は『神々の明治維新』で、江戸時代の大きな神社には僧侶身分の社僧と神職身分の社司がいて、神職身分が僧侶身分の下に置かれていたと語る。///キリスト教と一体化した平田国学は、被差別化されたキリシタン文化と儒仏体制から排除された国学の宿命的連結であったのではないか。それが楠公祭を通して、更に背後の後醍醐天皇の招魂祭まで引っ張り込み、全てが融合し、倒幕エネルギーに変容したのではないか。「萩キリシタン殉教者記念公園」を散策するうちに、そんなふうに思えてきたのだ。//顧みれば戊辰戦争時の廃仏毀釈も、多神教の神社神道では為し得ない不思議な出来事だった。むしろ聖書における一神教キリスト教によるサタン排撃思想と酷似している。実際、長州藩の招魂祭の延長に成立した明治新政府の国家神道ロジックは、キリスト教そのものだった。靖国神社とキリスト教は一見対峙するが、それが表層的であることは日本が太平洋(大東亜)戦争に敗れたときに、アメリカ占領軍が靖国神社焼却計画を進めた際、これを阻止したのがイエズス会のブルーノ・ビッター神父であったことでも知られている(『靖国神社と日本人』)。最近では平成22年8月にフランスの右派政党「国民戦線」の党首ルペン一行が靖国神社に参拝したが、彼らもカトリック教徒だった。明治維新とキリスト教、そして靖国神社の三者が互いに近い存在に見えてくる。(p21,2)

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南里有隣『神理十要』におけるキリスト教の影響
http://repository.aichi-edu.ac.jp/dspace/bitstream/10424/135/1/kenjin578392.pdf


靖国神社と日本人 (PHP新書)

靖国神社と日本人 (PHP新書)

  • 作者: 小堀 桂一郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 1998/07
  • メディア: 新書



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