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「中国飲食故事」浙江出版集団東京 [食生活]


中国飲食故事

中国飲食故事

  • 出版社/メーカー: 浙江出版集団東京
  • 発売日: 2019/12/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


啓発的で深い内容だと思うのですが、むずかしい

「食」という生活の基本的な部分をとおして中国の文化(漢文化)に親しむことができればと手に取りました。

内容としては、著名な中国の人物たち(李白、杜甫、蘇軾、孔子、屈原、隋煬帝・・)と特定の料理、食材との関係がエッセイ風に論じられていきます。ところが、たいへん難しい。多分、そうした人々、また料理についてのある程度の知識とさらに知りたいというつよい願いが伴わないと、通読自体難しいのではないかと思います。

同様の中国の故事などを扱う平凡社の「東洋文庫」であれば、索引が用意され脚注で補足されて理解を助けられますが、本書に脚注、索引はありません。また、料理名、人物名にルビが付されているものもありますが、付されていないものの方がはるかに多く、どのように読んで(発音して)いいものか分からないものを通読していくというのは、なかなかたいへんなものがあります。

たとえば、以下に目次(章立て)を示しますが、第3章の「小吃」に「シャオチー」とルビが付されていますが、それ以外の名詞、熟語にいっさいルビはありません。第5章の□としたところには、草冠に會の文字(第2水準漢字)が入りますが、同様にルビはありません。

第1章 名菜 「東西南北 名菜千秋」中国各地の名物料理とその逸話 第2章 食材 「七滋八味 食材為先」 多彩な味作りは食材選びから 第3章 小吃 「官礼嘉湖 小吃應時」軽食は官礼と季節に合わせて 第4章 酒茶 「品味飲趣 酒茶莫属」飲む楽しみは酒と茶にあり 第5章 雑録 「勝友高朋 雑□見長」優れた友らの食文化への貢献

日本でいうなら聖徳太子、柿本人麻呂、空海、紀貫之など著名な人物たちとなんらかの料理、食材との関係が綴られていく内容で、たいへん興味深く思うのですが、以上の点が障壁になるように思います。(個人的にはハクビシンが食材として美味く、「菓子狸」と呼ばれることを知ることができたのは収穫でした)。それでも、より深く「食」をとおして漢文化に迫りたいという方にとっては、啓発的で深い内容であると思います。

以下、抜粋引用。〈実際、李白の時代に飲まれていたのは、作りが荒く素朴な加工されていない赤酒や米酒で、後に広く広まる高粱や大麦など穀物を蒸留させて作った焼酎や白酒ではなかった。これらはすなわち、『水滸伝』の文学的事実として、武松が通った景陽岡のあの「三碗不過岡」という強い酒である。/ 赤酒の見られる史冊は商周期に始まる。中国最初の医学文献『黄帝内経』に頻出する「□□(ロウレイ)」こそ赤酒の前身だ。・・(p185「李白と『黄酒』)〉

2020年3月27日にレビュー

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