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江戸の祭礼(角川選書)岸川 雅範著 [宗教]


江戸の祭礼 (角川選書)

江戸の祭礼 (角川選書)

  • 作者: 岸川 雅範
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2020/02/26
  • メディア: 単行本


神田神社の祭礼をその起源にさかのぼり、江戸と現代を往還しつつ示している

著者は神田明神の権禰宜、つまり神職で、国学院大神道学部の博士課程を修了した博士である。当然、その立場からの記述が多くなる。「江戸の祭り」とタイトルされているが、神田明神の祭礼についての記述が多い。それは単に歴史的な事実が列挙されるというのでなく、神社そのもののはじまりについて、さらには、その祭りの過去と現代とが往還的に示されて興味深い。豆まきや初もうでについての記述など、庶民の暮らしと関連する内容もあり、親しみをもって読むことができる。

ことさら、強調されているわけではないが、江戸のコミュニティーのありようが、現代とどうつながってくるか示唆する記述もあり、個人的にはそうした点がおもしろかった。すこし誇張した表現になるかもしれないが、江戸の祭りは現代のわれわれの暮らしと地続きであることを知る面白さがある。「明治は遠くなりにけり」というが、そんなに遠くもないのだと知らされる本であるとも言える。

興味深い記述が多いのでなおさらそう思うのだが、願わくは、索引をつけて欲しかった。(以下、抜粋引用)

「明治33年2月22日、東京府令第16号が出され各町に衛生組合を設置することが義務付けられた。これら衛生組合が、後に明治後期から大正・昭和にかけて結成された町会あるいは町内会のもととなった。p23」

「確かに明治以降、江戸の町々は変遷していった。小木新造氏によると明治22年以降、他府県より東京へ流入してくる寄留人口が激増し、江戸化政期以来の小商人、諸職人、雑業層による地縁的人間関係で成り立っていた町内完結社会は崩壊したという。それは江戸根生いの江戸っ子意識の薄弱化と新しい文化生活の導入を意味し、こうした町の人々の変遷が神社への信仰や祭礼へも大なり小なり影響したことは十分に考えられるとしている。p42」

「町神輿の普及には、近代日本における都市内地域組織・町内会の誕生が大きな影響を与えているようだ。町内会は昭和9年(1934)の東京市による調査では大正時代が激増期であったことが指摘されているが、その多くは日露戦争出征者の送迎、慰問などの影響と大正デモクラシーの盛り上がりにより自発的に結成されたという。p45」

2020年3月26日にレビュー
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