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「50歳から元気になる生き方」 武田邦彦著 マガジンハウス [医学・健康]


50歳から元気になる生き方 70代の今がいちばん健康な科学者が実践!

50歳から元気になる生き方 70代の今がいちばん健康な科学者が実践!

  • 作者: 武田邦彦
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2019/10/10
  • メディア: 新書


一つ目小僧の世界における二つ目の住人になった気分

当初、読みつつヒドイ本だと思った。著者は科学者を自認し、「本書を通じて科学的にもじっくり解説してきました(「おわりに」)」と記しているが、実際のところ自分の思い、主張を展開するだけで根拠(らしいモノ:参考文献等)が示されていない。

東京大学出身のエライ先生であるから、きっと根拠がアルにちがいないと思い込まない限り、読み続けるのは難しい。たとえば、動物の寿命とかかわる3つの原則のひとつとして提示されている「経験数一定数の法則」というものがアルという。それで、「万有引力の法則」同様にウィキペディア等で解説されているものとばかり思ったら、そうではない。ネット検索すると、どうも“著者自身の言葉”であるらしいことが分かる。心拍数が遅い象と速いネズミとで、一生の間の拍動数が同じという論議(それは評者も以前どこかで聞いた覚えがある)を、ご自分の言葉で「法則」と表現したものであるらしい。以前、養老孟司先生が、オウム真理教の教祖が水中に(呼吸することなく)1時間留まることができると真に受けて、「尊師が水の中に1時間沈む実験をやるので、立会人になってください」と頼んできた教え子(東大生)のことを呆れながら話していたが、著者はそういう系譜に連らなる人物ではなかろうかなど思ったりした。

血圧に関する論議では、血圧は個人(体の大小、年齢等のちがい)によって異なるもので、それを一定の数値以内になければ健康でないという医学会の常識はオカシイという主張をなされている。要するに、当人が「元気」と感じられればそれでイイといった論議である。それはそれで、「ナルホドそういう考えもあるのか・・」と読むことができたのであるが、「私は数年前、頭の中で出血が起こり、死にかけました。運よく生き返りました。次に出血が起きたときにはそれなりに考えると思いますが、それまでは、今の生き方でいこうと思っています(p128)」という記述には、驚かされた。そして仮に、それで死んでしまっても、自分の「運」として受け入れるのだという。

そういう論議を評者なりに総括すると、その時、その時を、「元気」で過ごすことができさえすれば、それが「健康」であって、血圧が医学会でいう異常値であろうが、それでぽっくり死のうがそれでイイというような論調である。それは到底、健康で元気で長生きしたいと願うフツウの人の考えではない。

それでも、著者のような意見をもつ存在が世界にイルということを知ることができただけでも、ベンキョウになった。そして、評者にとっては、あんまりにも異見であり、異形の見解であるので、かえってどういうところからそういう変わった見解が出て来るのか興味が湧いて、再度読もうと思っている。一つ目小僧の世界の二つ目の住人になった気分である。

2019年11月7日にレビュー
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