『乱と変の日本史 (祥伝社新書)』 本郷 和人著 [日本史]
星5つに値する
10の「乱と変」が取り上げられ論じられる。第一章 平将門の乱 / 第二章 保元の乱、平治の乱 / 第三章 治承・寿永の乱 / 第四章 承久の乱 / 第五章 足利尊氏の反乱 / 第六章 観応の擾乱 / 第七章 明徳の乱 / 第八章 応仁の乱 / 第九章 本能寺の変 / 第十章 島原の乱。
著者は、それら歴史上の点を線でつなぐ。「すべてをつなげることで、日本史を貫くものが見えてくる」と(書籍・袖に)あるが、著者の「つなげ」た線、引いた線は、“変ではナイ”と評者は思う。独自の見解もあるにはあるが、自分の立場・見解であることはその都度ことわっているし、教科書的見解や対立する他の見解も示されている。他の見解を貶めるような扱いをしているわけでもなく、全体に公平であるように思う。
通読しての印象は、オモシロイの一語である。オモシロイというのは、説得力があって啓発されたということである。とりわけ、『応仁の乱』については、それ以前の乱との関係から説き起こされ理解が深まった。全体を統括する権力機構が弱まると、重石のゆるんだ樽(タル)の中から封じ込めたモノが飛び出してくるように、帰属する諸勢力が“変な動き”をはじめることが分かった。
くり返し読んで、知識を自分のなかで整理していきたい。そのように思わせてくれる本であるというだけでも星5つに値する。
2019年8月3日にレビュー