「世界一おもしろいお祭りの本」 ロブ・フラワーズ著 創元社 [文化人類学]
人間とは何か “感じ・考える” きっかけになる一冊
評者に言わせるなら、本書は「世界の奇習・奇祭をめぐる旅の絵本」。とはいえ、本書に出会わなければ、一生知らずに終わった「お祭り」を知ることができた。それには、紹介されている日本の「お祭り」も含まれる。それらが、色彩ゆたかで躍動感のあるイラストで示されていく。
「お祭り」には、共通性がある。仮面、仮装、音楽などなど。そうしたものの起源は、わからないまでも、人間精神の深いところで繋がっているのだろう。ふかく踏み込んだ解説はないが、子供たちをふくめ見る者に「なぜ人種も言語もちがいながら共通性が存在するのだろう?」という疑問をいだかせるにちがいない。
奇祭についてさらに知りたければ、「ユーチューブ」などで検索して実物を“見る”こともできる。検索するには、「お祭り」の呼称を知ることがまず必要だが、その点で本書は漢字・カナだけでなくローマ字での表記もあり、十分な情報を提供している。
個人的には、「巨人」、「カウベル」がお祭りに多数登場することを知り、マーラーの楽曲にも、こうした文化的深層が関係しているのではないかと考えさせられもした。
人間とは何かを“知る”というよりも“感じ・考える”きっかけになる一冊だと思う。
2019年6月30日にレビュー