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皮膚は「心」を持っていた!山口創著 青春出版 [医学・健康]


皮膚は「心」を持っていた! (青春新書インテリジェンス)

皮膚は「心」を持っていた! (青春新書インテリジェンス)

  • 作者: 山口 創
  • 出版社/メーカー: 青春出版社
  • 発売日: 2017/08/02
  • メディア: 新書


「触れる」行為を見直してほしい

たいへんオモシロイ本だ。皮膚は、体をぐるっと覆っているウスイ皮膜以上のものであることを知ることができる。

皮膚は、他者との境界をなしている。その境界の意識が無いとどうなるか。他者も自分も無くなって(同化して)しまう。人間は、他者との関係をハカリながら生きている。ある時はベッタリを良しとし、あるときは、距離を置くことを望む。

そうした、距離感を適切にハカルことのできない人は、人間関係における種々の問題を抱え込む。それが元でうつ病になったりもする。距離感をハカルことのできない原因のひとつとしては、成育時の母子関係等があるようだ。「心」の健全な成長と「皮膚」はたいへん密接なつながりがあるようである。

本書では、皮膚を単なる人体の外縁を成すものではなく、感情・心と密接なモノであることが示され、瞑想、マインドフルネスより即効性のあるものとしてのセルフマッサージも紹介されている。

スキンシップの大切さは、以前から言われて久しいが、(とりわけ異性や思春期の子どもに対しては難しいものがあるが)どのように行うことができるかも示されている。

本書執筆の意図として著者は、①優しく温かい絆で結ばれた社会にしたい。②心を整える方法として「触れる」行為を見直してほしい、の二つをあげている。

これまで、知らなかった皮膚について多くの啓発を受けた。学んだことを実践するよう促される書籍だ。


2017年11月15日にレビュー

以下は「蛇足」。ざっと読んで、南方熊楠の研究対象であった「粘菌」を想起した。粘菌は、単細胞で生活するが、多数が集合して同化し、巨大なモノともなる。

また、三島由紀夫の(正確なタイトルを失念したが)「手で触れるニューヨーク」というエッセイを思い出した。現代人の孤独は、モノからも疎遠となり、突き放されてあるところからもくる。

以下、目次

第1章 皮膚は「第二の脳」だった!?(肌に触れることは、心に触れること)
怒りっぽいのは「性格」のせいではなかった!? / 皮膚という「露出した脳」 / 頭が先か、体が先か。頭・心・体の関係 / 皮膚はもっとも原始的な感覚器 / 皮膚は“音”を聞いている / 耳では聞こえない超音波や低周波もわかる / 光や色も感知している皮膚 / 赤色にユニフォームで勝率が上がる!? / 皮膚はこんなに頭がいい / 目はごまかせても、皮膚はごまかせない / 触覚としての指紋の役割 / 皮膚は記憶を宿している / 触れられることからはじまる親子関係 / 胎児や赤ちゃんが感じるストレス

第2章 感情は「皮膚」でつくられる(イライラ、不安の理由は「肌」にある)
判断の決め手は理性ではなく皮膚感覚!? / 体が温まると、心も温かくなる / 清潔にすることで罪悪感が軽減する / やわらかいものに触れると、心もやわらかくなる / 世界中の子どもが持っている「ライナスの毛布」 / 硬い肌着でストレスホルモンが増加 / 赤ちゃんが求めているのは「食べ物」よりも「肌感覚」 / 虐待が子どもの肌感覚に与える影響 / 「痛いの痛いの飛んでいけ」で痛みが軽くなる理由 / 孤独は心だけでなく体にも影響する / 紙の本と電子書籍、記憶に残りやすいのは? / 触覚の根っこは「命に触れる」こと / 年を重ねても触覚は衰えない

第3章 皮膚で「心を整える」方法があった!(この「触れ方」でポジティブに変わる
「触れる」機会が減りつつある現代人 / 皮膚が心地よさを感知するメカニズム / 動物にもある魚にもある「C触覚繊維」 / 「心地いい触れ方」の5つのポイント / こんな触れ方はやってはいけない / 触れることで、言葉以上に思いが伝わる / 「オキシトシン」というもうひとつの癒し / ストレスを軽くするスキンシップの秘密 / セルフマッサージで心を整える / マッサージでポジティブな心に変わる(実例:うつで悩んでいたクライアントが回復、体の不調だけでなく心も前向きに変化する、マッサージで過去のトラウマにアプローチ、母と子のコミュニケーションとしてのマッサージ) / 「触れる」ことで関係性がつくられる / マッサージをしている側にも変化が起こる / 災害、医療、子育て、介護・・「触れる」ことの可能性

第4章 「触れる力」が心を育てる (脳内物質「オキシトシン」の効果)
夫婦の絆を強くする脳内物質 / 子育て中の妻のイライラはオキシトシンが原因!? / 親子の愛情が深まり、子どもの情緒が安定する / 1~2歳の子どもの脳はだっこで育つ / 「触れない育児」が引き起こす悪影響 / 自閉症の子は脳のオキシトシンが少ない / ADHDの子どもも変わるタッチケア / 触れられ方の好みは人それぞれ / 「境界の感覚」を育むことの重要性 / スキンシップが多い子どもは学力が高い / 思春期の子どもの「触れ方」にはコツがある

第5章 「皮膚感覚」を活かす人づきあいのヒント (「心」に触れるコミュニケーション)
触れていなくても、そばにいるだけで心が強くなる / 相手を自分の一部のように感じるスペース / 「距離が近すぎる」というストレス / 添い寝するだけで自律神経が同調する / 病気の人には「付き添う」だけでもプラスの効果が / 「直接会わない」コミュニケーションのデメリット / 触れるだけで、相手に感情が伝わる / 相手のために触れる「慈愛の心」

子供の「脳」は肌にある (光文社新書)

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  • 作者: 山口 創
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2004/04/17
  • メディア: 新書



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  • 出版社/メーカー: 草思社
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