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*観察力を磨く 名画読解』エイミー・E・ハーマン著 早川書房 [心理学]


観察力を磨く 名画読解

観察力を磨く 名画読解

  • 作者: エイミー・E・ハーマン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2016/10/06
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


名画を介したインテリジェンスの本

書籍タイトルから西洋絵画をあらたな視点でより深く鑑賞する方法を教示する内容に思ったが、実際には、美術の本というより、名画を介したインテリジェンスの本である。表紙をよく観察すると、ちいさな文字で英文タイトルが “Visual Intelligence: Sharpen Your Perception, Change Your Life” と示されている。

『ウィキペディア』を見ると、《インテリジェンス(英語: intelligence)は、知能・知性や重要な事項に属する情報のこと。諜報活動のことを表すこともある》と説明され、さらに、項目としては「認知科学・心理学的な意味におけるインテリジェンス」や 「諜報活動(Intelligence assessment)」が取りあげられている。そして、「諜報活動」におけるインテリジェンス(intelligence)には、《行間(inter)を読む(lego)という意味》があり、そのようにして《収集した情報を分析・評価すること》、適切な《判断を下す》こと、そうできるよう他者(指導者等)に伝達することが関係するように示されている。

本書の目次を見ていくと、第1部「観察」、第2部「分析」、第3部「伝達」、第4部「応用」となっていて、諜報活動のインテリジェンスに対応する。また、本文中、美術作品(名画、彫像、写真)をもとに、課題が取り上げられていくが、ただしく認知できなかったゆえに、米国連邦捜査局員が口惜しがった例もでている。米アマゾンでは、 “Applied Psychology ”や“Decision-Making & Problem Solving”のカテゴリーに入れられているのも頷かれる。内容紹介に“An engrossing guide to seeing – and communicating – more clearly from the groundbreaking course that helps FBI agents, cops, CEOs, ER docs, and others save money, reputations, and lives.”というのも、よくわかる。

認知・情報収集上の問題を取り上げた1、2部もそうだが、「伝達」、「応用」部分も興味深い。複雑で受け入れがたく思える課題に冷静に取り組んだり、情報が完璧にそろっていない状況で適切に対応していく方法なども示されている。その課題がヒエロニムス・ボスの『快楽の園』であったり、クリムトの未完作品であったりする。たしかに、本書の提案をマスターしたなら、世界の見え方が格段に精細で深くなるように思われる。また、見えた世界を、必要に応じ、重要度に応じ、簡潔に伝達することが可能となるように思う。

2016年12月12日にレビュー

目次

第1部 観察
1:レオナルド・ダ・ヴィンチの力の秘密ー大事なものを見る、2:名探偵、参上ー観察の技をマスターする、3:カモノハシと泥棒紳士ーどうして人によって見え方がちがうのか、4:客室乗務員が無意識に行なうことー客観的観察のポイント、5:マヨネーズはどこに?-全体も細部も見る

第2部 分析
6:全周に目を配れーあらゆる角度から分析する、7:私はなぜ、引き金を引いたのかー情報の優先順位

第3部 伝達
8:ワインの値段ーコミュニケーションの不具合を防ぐ方法、9:ビッグ・スー;厳しい現実を適切に伝えるには

第4部 応用
10:介護施設でストリップ・ショー;生まれ持ったバイアスを克服する、11:担架がないときはどうするかー不確かな状況に対応する方法

終わりにー知覚の技法をマスターする

https://www.amazon.com/Visual-Intelligence-Sharpen-Perception-Change/dp/054438105X/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1481505972&sr=1-1&keywords=Visual+Intelligence%3A+Sharpen+Your+Perception%2C+Change+Your+Life

Visual Intelligence: Sharpen Your Perception, Change Your Life

Visual Intelligence: Sharpen Your Perception, Change Your Life

  • 作者: Amy E. Herman
  • 出版社/メーカー: Houghton Mifflin Harcourt
  • 発売日: 2016/05/03
  • メディア: ハードカバー


細部を見るための戦略=COBRA

*紛れているもの(Camouflaged)に意識を集中
私たちの目は、新しくて革新的でわくわくするものにひっぱられる。だからなんでもない場面に隠れている平凡なものをきちんと見るには、意識して注目しなければならない。意識しないとスルーしてしまう。そうならないために二度見ることをお勧めする。まずは全体を見わたしてから、改めてひとつひとつを見直すのである。できることなら見る角度を変えるといい。近くで見て、次は遠くから見る。周囲を歩いて視線を変える。ふつうでは見ないような角度から見れば、なんということのない眺めに、変わったものが含まれていることに気づけるかもしれない。

*ひとつ(One)の仕事に専念
複数のことを一度にこなすのは非効率で、成果もあがらない。私たちの脳は同時に何百万ものことを追跡できない。いくつなら大丈夫かというと、最近の研究では4つでも多いそうだ。スタンフォード大学教授のクリフォード・ナスは「複数のことを同時にする人は、あらゆる場面でお粗末な結果をもたらす」と主張する。それで、 気を散らすものを閉めだして、観察だけに専念しよう。

*休憩(Break)をとる
心理学者によると、脳の認知制御システムは休憩をとることで鋭さをとりもどす。専門家が推奨するのは二種類の休憩で、まず、20分ごとに短い休憩をとり、精神を休ませる。少しのあいだ作業をやめるのだ。ポイントはそれまでしていたこととまったくちがう活動をすること。報告書を読むのをやめてメールを読んだのでは意味がない。誰かと顔を合わせて話すなど、ちがう回路を使うといい。次は90分ごとに10分の休憩を入れる。散歩するとか(できれば外へ出るといい)、机の前でするヨガでもいいので身体を動かし、何か楽しいことをしよう。短い昼寝も有効だ。

*期待を見直す(見直し:Realign)
ささいな情報を見逃すのは、こうあるべきという期待が強すぎるからだ。/脳がどんな情報をはじくかを自覚することはできない。大事な情報を排除しないためには、先入観を捨て、ただ見ることだ。

*第三者の手を借りる(意見を聞く:Ask)
ひとりひとりの見方は異なるので、観察の際は第三者の助けも有効だ。同じものを、新鮮な目で眺めてもらう。第三者を選ぶときは、なるべく自分と意見や考え方や生い立ちが異なる人がいい。誰かの助けを借りると無能のレッテルを貼られると心配する人もいるが、実際は逆だ。第三者の協力を得ることで、真剣に問題を解決したいという心意気が伝わる。

以上、p128-132「 細部を見るための戦略」から引用

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