『自分で考えよう: 世界を知るための哲学入門』ペーテル・エクベリ著 晶文社 [哲学]
スウェーデンが種々の点で「モデル国」となったのは、「哲学」が身近なものであるから?
カラーの挿絵をふんだんに用いた絵本のような哲学入門書。著者は、スウェーデンの人。読者対象は、中学生くらいではないかと思う。たいへん、読みやすく理解しやすい。
かの国では、「1970年代に選挙権をすでに18歳まで引き下げ、さらに若者の政治への関心の高さゆえ現在16歳への引き下げまでもが検討され」「子どもの権利が重視されてい」るということだが、なるほどそのような国ならではの著作なのであろうと感じる。
次のような記述がある。「哲学者は理性的な議論を積極的に行う。また哲学者にとって勝者は、最良の議論だ。相手の提案のほうが正しければ、自らの考えを変えることもありうる。哲学者はあたらしいものごとを学びたいという意欲にあふれている。またある問いに対し相手の論のほうが筋が通っていれば、よろこんで自分の意見を変えるだろう。/ 哲学者にとってたいせつなのは、『“だれが”正しいか』じゃない。『“なにが”正しいか』だ! よい哲学者は自分の考えを批判されても怒らない。また哲学的議論をするとき、うそをつかず、本当のことを言う。/ つぎにきみが友だちとけんかをすることがあれば、いまのことを思いだしてみるといいかもしれないね」。
こうして、引用してみると、かの国における「哲学(者)」という言葉は、日本語の「哲学」よりはるかにずっと身近なものであるように感じる。日本では法律用語である「憲法」が、英語では「構成、組織、構造、・・」を意味する日常語(constituion)としても用いうるのと同じようにである。
スウェーデンは、「クリーン・エネルギー、教育機会の平等、手厚い介護や年金制度、男女平等、オンブズマン制度などのモデル国として日本で注目されてきた(『訳者あとがき』)」が、本書が示すように、「哲学」が身近なものとして、国民のあいだに息づいていることが、それと関係しているのかもしれない。多くの若い人たちに読んで欲しいところ・・・。
(因みに、本書の挿絵は、『め牛のママ・ムー』福音館書店 のイラストを担当したスヴェン・ノードクヴィスト)。
2016年11月29日にレビュー
https://sv.wikipedia.org/wiki/Peter_Ekberg_(f%C3%B6rfattare)