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『境界から世界を見る ボーダースタディーズ入門』岩波書店発行 [外交・国際関係]


境界から世界を見る――ボーダースタディーズ入門

境界から世界を見る――ボーダースタディーズ入門

  • 作者: アレクサンダー・C.ディーナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2015/04/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



入門書にしてはムズカシイ印象ですが、スケール大きくオモシロイ

世界を見る新たな視点をもつことができれば・・と思い、当該書籍を手に取りました。「入門」とありますので、楽に読めるものかと思ったのですが、思いのほか「むずかしい」。総論となる第1章からして、抽象性が高く観念的です。身近で具体的なものも取り上げて説明されているのですが、スッと入ってこない。それではと「歴史」をあつかっている第2章なら具体的でわかりやすかろうと読みはじめましたが、これもムズカシイ。さらに、読み進めて4、5、6章に入り、現代の具体的事例が取りあつかわれている章に入って、ようやく抵抗をさほど感ぜずに読み進めることができるようになりました。

「ムズカシイ」と感じた原因は、どうも『境界』という言葉を“線”として捉えていたからのようです。要するに、自分の既存の思いが邪魔をしていたということなのでしょう。既存の思いとは、先入観と言い換えることもできようかと思います。『解説』(岩下明裕氏による)で、「境界研究のコミュニティ形成」のはじまりが、米墨国境地域研究として始まった」とあり、その研究会の名称が“ABS Association for Borderlands Studies”とあるのを見て、“線”ではなく“面”としてとらえるべきものであることに気付きました。複数の国家をはじめ、複数の文化やらなにやらが隣接する領域とその境目(境界)をなすもの、また、そこを出入りする人やらモノやら情報やらを研究する学問であると気付いたということです。

境目(境界)は、ちいさなところでは、身近な室内の部屋割りのようなものから、大きなところでは、国境、さらには人工衛星の活動域である宇宙も射程にはいるもののようです。そもそも当該書籍の著者たちは、国際関係論、政治地理学等、政治学、地理学の学位をもつ人たちであるということですので、基本は地域研究ということになるのでしょうが、それにしても、スケールの大きな学問領域です。

目次・見出し
日本語版への序文
1章:世界は境界だらけ// 領域、主権・境界/ボーダースタディーズとは何か/本書の意義

2章:古代の境界と領域//猟採集民の領域性/古代の国家形成/遊牧民集団/都市国家/帝国/柔軟な領域的構造としての古代政治体

3章:近代の国家システム//近代国家の起源/自然による境界からナショナルな境界へ/国民、国家、国民国家/植民地主義と主権/植民地の境界を創出する/国家よりも下位レベルにある境界

4章:境界を引く//過渡期にある国境/グローバル化と領域/国境と安全保障/透過性をもつフィルターとしての国境/国境と主権から見た新しい風景/偶発的な主権/マイノリティの領域と先住民の主権/段階付けられた主権と分離された主権/出現する国境地域(ボーダーランズ)

5章:境界を越える//移民と難民/国境を越えるアイデンティティとコミュニティ/反乱者とテロリスト/犯罪者と警察/ツーリスト・観光・境界

6章:境界を越える制度とシステム/アイディアと情報/超国家主義と地域主義/環境問題と境界/保険と境界/倫理と境界

エピローグ・・・境界に満ちた将来

解説 世界を変えるボーダースタディーズ//世界はボーダーレス?/事例と理論を切り結ぶ/世界のコミュニティ形成/日本における挑戦(岩下明裕 2015年度 境界・国境地域研究学会(ABS)会長)

訳者あとがき/索引/文献案内/関連ウェブサイト

2015年8月27日レビュー


日本の国境・いかにこの「呪縛」を解くか (スラブ・ユーラシア叢書)

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  • 作者: 岩下 明裕
  • 出版社/メーカー: 北海道大学出版会
  • 発売日: 2010/01/25
  • メディア: 単行本



「見えない壁」に阻まれて (ブックレット・ボーダーズ)

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  • 作者: 舛田佳弘
  • 出版社/メーカー: 北海道大学出版会
  • 発売日: 2015/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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